2008年11月17日(月)
重工業源泉のオランダ製スチームハンマー
第1回でも紹介した日本の重工業の源泉であるオランダ製3トンスチームハンマーは、現在、神奈川県横須賀本港のヴェルニー公園内のヴェルニー記念館に0.5トンタイプとともに2基が飾られている。国内現存最古のスチームハンマーとして国指定重要文化財となっている。
このヴェルニー記念館は、小栗公が提唱した近代化のための横須賀造船所(製鉄所)の建設に、支援を得たフランスより派遣されたフランソワ・レオンス・ヴェルニー技師の功績および、同造船所の意義を永く後世に伝える目的に建てられた。
スチームハンマーは、蒸気(スチーム)を動力にハンマー(槌)を垂直に持ち上げ、加熱した金属素材へとハンマーを落下させた打撃力によって素材を成形する、いわゆる鍛造加工の工作機械である。同機械は、19世紀半ばにイギリスのナスミスが考案した。
ハンマーの能力は、落下する部分の合計重量を表している。また、威力を発揮するには巨大なハンマーを受け止める地下部分の役割も重要とし、ハンマーの地面の下には落下部分の総重量の20倍から30倍もある重量物を埋めるのが一般的であった。
同記念館に飾られているスチームハンマーは、オランダで慶應元年(1865年)に製造され、翌年に横須賀造船所の据付機として輸入。当時は、造船の技術革新時代であり、幌船、外輪船、太平洋を横断した咸臨丸のように船尾にスクリューを備えた船もあった。
スチームハンマーは、これらの船の各部品を製作するために導入された。特に、明治初頭は外輪船を横須賀造船所で建造していたことから、外輪を稼動させるロッド加工も行なわれていたようである。
なお館内には、スチームハンマー3トン、0.5トンの2基のほかに、構造が体感できる10分の1縮尺模型(3トンタイプ)、鍛造加工時に使用された大型の道具や金型、完成した船を進水させるためのガントリークレーン部材の一部などが飾られている。
ヴェルニー記念館の発行パンフレット等より