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村上泰賢氏の「わが国産業革命のはじまり」117 -日本産業革命の地・横須賀造船所

小栗まつり・機械工学の講演   

 3年ほどコロナ禍で20数名が墓前供養だけ行ってきた。昨年ようやく従来の小栗まつりに近い形で復活。今年5月26日はさらに昼市の軽食販売出店もでき、全国から参加者が小栗上野介の人物・業績に触れた一日となった。

 記念講演で早稲田大学の浅川基男名誉教授が、専門の機械工学から見た幕末の状況と現在の日本、これからの視野を語ってくれた。

 日本は急激な人口減少に入り将来は人口5千万人の国になる。モノづくり産業はどうしたらいいか。米・中・韓・日の若者調査で、◆偉くなりたいか・・・他の国の若者は「偉くなりたい」。日本の若者は「なりたくない」 ◆自分の会社や店を作りたいか・・・日本だけ「作りたくない」 ◆のんびり暮らしたいか・・・日本だけ「のんびり暮らしたい」。じつは40年前に高坂正堯氏は著『文明が衰亡するとき』で、18世紀末にヴェネツィアが消滅した例をあげ、警告していた。18世紀に階級が固定化し、貴族階級が国を支配、その貴族が結婚しなくなった。6割が独身、覇気が失せ、国家発展の基礎だった貿易をリスクが高いとやらなくなった。ナポレオンに攻め込まれたら国力が維持できなくなった。いまの日本も似ている。

 幕末に佐賀藩主鍋島直正はアヘン戦争で明国が英国に敗れた危機感から、情報を集め西洋科学技術を積極的に導入し、技術者を受け入れて近代化を図っていた。小栗忠順は遣米使節で渡米して日本のあるべき将来像を描き、その一つが横須賀造船所建設だった。船だけ造るのではない、あらゆるモノづくりをする総合工場が造船所と見抜き、反対意見に「幕府が終わっても日本は続く。あとの役に立つ」、「土蔵(造船所)付き売据えでいい」と笑って建設を進めた。

 これからの日本は、もっと外国人と女性の雇用と活用を進め、新しい発想で働く若者を歓迎することが大切、という講演。吹奏楽、マンドリンの「小栗のまなざし」演奏、新作能「小栗」披露と、小栗づくしのまつりとなった。

本紙2653号(2024年6月27日付)掲載





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