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村上泰賢氏の「わが国産業革命のはじまり」100 -日本産業革命の地・横須賀造船所―

マザーマシンが人づくり(つづき) 4

 見学を終えて、毎年ヴェルニー公園で行われる市主催の「ヴェルニー小栗祭」に出席した。式典が終わってレセプション会場に入ると年配紳士のグループに招かれた。「方丈さん、ベース(基地)であのハンマーを見てきたそうですね」先ほどの基地の工場で働いていた元職工・技師OBのグループだという。「あのハンマーをすごい腕前で使いこなしたのが彼ですよ」
とそばの老紳士を指さす。はあ…?いったいどう使ったというのか-

 「あの台の上に懐中時計を置いてハンマーを落とし、ギリギリのところで止めた。鎖を引っ張ったら押さえられて出てこない。しかもハンマーを引き上げたらガラス面は割れていなかった」という。驚いた話だ。あんな大きなごついハンマーでそんな神業のような使い方ができるのか! 3㌧の重さで打つだけでなく、打つときの加重を微妙に加減できるのだ。言われた老紳士は「オレはそんなことはしていない」とは言わずニコニコ笑っていたから、本当にそれをしたのだろう。

 モノづくりの原点はヒトづくりと聞いていたが、まさに横須賀造船所は完璧な技を使いこなす人づくりもしていたのだ。いい話を聴かせてもらった。

 ヴェルニー小栗祭 市の恩人として仏人技師長ヴェルニーと小栗上野介の功績をたたえる「ヴェルニー・小栗祭」は、横須賀市の主催でフランス大使や大使館関係者、アメリカ海軍基地司令官などが夫人同伴で出席、外務大臣代理、海上自衛隊幹部、海上保安庁関係者、日仏協会、それに私たち高崎市倉渕町の小栗上野介顕彰会が毎年参列している。式典の前後に海上自衛隊横須賀音楽隊の演奏がある。2013平成25年4月に筆者が新進の作曲家福田洋介氏に依頼して行進曲「小栗のまなざし」を作曲してもらったら、大河ドラマのテーマ曲のような出だしから、小栗の生涯をイメージするメロディーが展開する壮大な曲に仕上げてくれた。「小栗まつり」で初演し、横須賀市に送って海上自衛隊音楽隊に演奏してもらったところ好評で、近年はこの演奏が式典の締めくくりとなっている。

本紙2602号(2023年1月27日付)掲載





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