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村上泰賢氏の「わが国産業革命のはじまり」8-ほんとうの「幕末明治の産業革命遺産」は―

横須賀製鉄所

「勝海舟・咸臨丸神話」について書いている途中で、今回割り込み記事を書かざるを得なくなったことを、初めにお詫びします。

 5月4日、ユネスコのイコモス(国際記念物遺産会議)が日本政府の推す「明治日本の産業革命遺産―製鉄・鉄鋼、造船、石炭産業―」を世界遺産として認定するよう勧告したとのニュースが流れた。しかし、候補に挙げられた23の施設・地域になぜこれが世界遺産か疑問に思われるものがある。

1, 水力を原動力とする施設が約3割…産業革命は蒸気機関を原動力とすることは基本であろう。先人の努力は認めるが世界遺産にふさわしいか疑問。
2, 蒸気機関を原動力とする施設のほとんどが明治30~40年代…これがそのまま認定されると日本の産業史や歴史教育を誤ることになる。

 今回のリストにない横須賀製鉄所は小栗上野介が遣米使節の見聞体験を活かして建設を提案し、1865慶応元年に建設が開始された。完成した施設から順次稼働し、1869明治2年には全施設がほぼ(ドックが未完成)フル稼働に入った。蒸気船でもまだ帆走汽船の時代だから製帆所も製綱所(ロープ工場)もあり、木造船の時代だから製材・木工所もあった。明治4年までの「製鉄所」とは鉄の塊を持ち込んで溶かし様々な「鉄製品を製する所」だったから、蒸気機関・シャフト・パイプ・締結のネジ・銃砲から鍋カマまであらゆる鉄製品をつくる、まさに蒸気機関を原動力とする一大総合工場だった。この別格ともいうべき大工場から群馬県に伝わったDNAとして、世界遺産の富岡製糸場と中島飛行機(いま富士重工)をあげておこう。いずれ詳述する予定。

3,「松下村塾」「萩城下町」「グラバー邸」がなぜ産業革命遺産か…サブテーマの「製鉄・鉄鋼、造船、石炭産業」にどうこじつけても不可解としか言いようがない。 *詳しくはHP「東善寺」→「富岡製糸場は横須賀造船所の妹」へ


本紙2329号(2015年5月27日付)掲載





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