現在位置: HOME > コラム > 波紋 > 記事


社説 波紋

様々な経済等の報告に「東日本大震災の影響により…」の言葉が

 大企業では景気回復の足どりが早い。1~3月期も順当に持ち直しの状況が拡大していた。遅ればせながら中小企業にあっても3月に入って持ち直しの動きが見え始めている(中小企業庁調査)。いわば日本列島が静かに新年度を迎えていたのだが、この静かな年度がわりに水を差すところか、大津波で東日本の新年度は狂いも狂ったりで大混乱となった訳である。

 政府の4月の月例経済報告では、景気は持ち直していたが「東日本大震災の影響により」このところ弱い動きとなっている。また、失業率が高水準にあるなど依然として厳しい状況にある―と、以下の景気動向に「東日本大震災の影響により」という表現が各項目の頭に付いて回っている。

 いくつかをひろってみる。「輸出は持ち直しの動きがみられたものの、東日本大震災の影響による減少が懸念される」「生産は持ち直していたものの、大震災の影響によりこのところ生産活動が低下している」「企業収益は、改善しているが、大震災の影響が懸念される」「雇用情勢は依然として厳しいものの、持ち直しの動きがみられる。ただし、大震災の影響が懸念される」といった塩梅である。

 大震災の影響懸念が付いていないのは設備投資の項「設備投資は持ち直している」の簡略12文字のみ。当面、何にでも「東日本大震災の影響により…」という付け足し表現(又は但し書き)が増えそうだ。活気を取り戻した自動車メーカーがその出鼻を挫かれたことこそ「大震災の影響により」の表現がピッタシではある―。


[2011年4月27日付け本紙2182号掲載分]


バックナンバー

購読のご案内

取材依頼・プレスリリース

注目のニュース
特集
  • 阪村氏「ねじと人生」
  • 機械要素技術展
  • 最古唐招堤寺からねじ発見
  • 同志社クラーク記念館からボルト