社説 波紋
不適切な取引 「預かり在庫取引」
これは自動車メーカーの本田技研工業の子会社「ホンダトレーディング」(HT社)の水産事業部門での出来事(当時の担当課長が水産物の預かり在庫取引をめぐり、取引先との間で行った不適切な取引の件)の顚末だが、親会社ホンダは世界的なカーメーカーとして知られており、いくら子会社だからとはいえ小魚(シラス等)相手の水産事業などは随分と掛け離れた感が否めない。
その辺に無理があり、うまく行かない要素・原因があったようで、いわずもがな「不適切な取引」という結果(不祥事)を招いたのだ。場違いだやめとけ…とか、慣れない事には手を出すな…とよく言うではないか。機械工業分野のグループの中で「シラス等の水産物でもあるまい」とケナされても、言い逃れもできないという訳だ。その道の専門家だって失敗するそうだ「預かり在庫取引」。
この「預かり在庫取引」とは、水産物の仕入れ期(漁期)と販売期のズレを埋める目的で、水産物業者が仕入れた水産物をHT社が買い取り、一定期間経過後に業者に売り戻す取引を指すそうだ。前述の不適切な結果は、この預かり在庫の不良化による損失(例えば何十億円にも)の負担を回避するために始めた損失の上乗せ(仕入代金への上乗せ)である。
こうして市場価格から水増しされた代金での預かり在庫仕入れを行うようになり、継続の流れの中で同一在庫の循環などもあり預かり在庫総額は増大、当事者たちの破綻は言うまでもない。親会社も放っておけない。調査して概要を縷々(るる)公表した。主たる原因の一端について「水産事業に対する知識・経験の不足や会社の与信管理制度やITシステムの機能的欠陥などリスク管理体制の問題」を指摘だが、それよりも担当者に10年近く預かり在庫取引を一手に担わせた人事の長期固定化が第一因とすることができそうだ。
[2011年2月27日付け本紙2176号掲載分]
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- 不適切な取引 「預かり在庫取引」 2011.03.07 月曜日