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要の人

要の匂いを嗅ぎ分けられる人って、流石ですよね。私はそういう人々を『要の人』と心の中で呼んでいます。いちホステスの私が彼らの贔屓でなくても、年に数えるほどの来店で常連様と言えなくとも、私の重要な日に時間を割いて来てくださいます。その方々の事を私は一生忘れないでしょう。

要の人は経営者・経営陣と呼ばれる人々が多いです。最初のうち、私はこう考えていました。彼らにとって、夜の世界の人間はひとときの安らぎや楽しみの場を提供する息抜き。銀座は彼らが仕事の時間を割いてまで来る場ではなく、仕事終わりの嗜好品的なものだ、と。しかし、その考えはすんなりと覆されました。人との繋がりが大きい銀座ですから、彼らは私たちの事も人として大事にしてくれる。誕生日、周年、入店、退店。それらのイベントはホステスにとって恐怖と不安と焦りと……ほんの少しの期待の籠った重要な日。そういう複雑な気持ちでいる時、自分が顔を出したなら係りの女性はどんなに緊張が解れるかを理解されているのです。彼らが忙しいからこそイベントにのみ運ばれるのも一理あるけれど「人」というものは、儚くかけがえのないものだという念をもって尊重しておられるように感じます。そういう類のお客様を見ると会社でも同じように同僚や部下に接していらっしゃるのだろうなと信頼と安心感が湧きます。だからこそ今の素晴らしい社会的地位に立っていらっしゃるのだな、と。

ギブアンドテイクとはよく言ったもので、優しくされると自分もその人へ優しくしたくなる。褒められるともっと頑張りたくなる。要の人たちは、持ちつ持たれつの関係性を構築するのが非常に巧いのです。素性からそう出来る人も居る。ビジネスの上で上司から学んでやっと出来る人も居る。……私の場合、最初はお客様から感動を与えられる事の方が多かったので、後者ですね。いずれにせよ日常的に人間関係の構築をしている人は、誰かの「ここぞ!」という時に、心に残るような感動を与えられる人です。粋ですよね。銀座にお勤めして大きな学びです。

今では、私のポリシーが『人生の中でどれだけ人に感動を与えられるか』となりました。自分がされて感動した事は必ずその人へ何十倍、何百倍にして返していきたいし、自分が与える事が出来るのならば、心であれ物であれ、最大限に贈りたいと思えています。





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