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マノンと父と車椅子

 私、父親が大好きです。

母親に対しては反抗期がありましたが、覚えている限り父に対してはずっとイエスマンだった気がします。考え方、行動力、我慢強さ、誠実さ、清潔感、他人(特に子供)を可愛がるところも……人間の総合力と言いますか、今も尊敬しかないです。仮に自分にパートナーが出来たとしても、父以上の男性は居ないですね。銀座でお会いできる素敵な男性方よりも父!! そんなの聞くと「君、変だよ」って仰る方もきっと居られますよね。しかし稀有な事ではありません。最近の子は「パパ臭い!!」「あっち行って!!」なんて言うくせに「結婚したいのは、パパ」らしいですよ。家庭にもよりますが、血の繋がりってやっぱりそれほどまでに強力な……何にも代え難いものなのだと思います。

さて、私の父は、関東の大学で学生生活を送っていました。世田谷の下北沢駅近くの喫茶店でアルバイトの経験をしています。「マノン」という、小さなお店らしいです。マノン……いかにも昭和チックな哀愁漂う素敵なネーミングだと思いませんか? 今の時代なら××Caféなんだろうな。カフェが主流で準喫茶はほとんど見なくなりましたもんね。父が勤めていたのは役半世紀前。下北沢ってまだ古い喫茶店が数多くあるんですね。自分の親が働いていた空間があるなら行ってみたいと思いましたが残念。Googleマップで見る限りはありません。実際、無くなっていました。

私には御年九十三歳の祖母が居ります。そんな祖母も、父と同じく喫茶店で働いていたようです。そこで祖父と出逢って結婚した。と聞いています。そんな祖母は去年から車椅子生活になりました。

父もいつかは祖母のように歩けなくなって、私もそうなるのだろうな。当たり前だけど時間というものは残酷なもの、と改めて感じます。離れた実家に帰省し、祖母の車椅子をあと何回押せるのだろうか、と考えます。親が子と過ごす平均時間は生涯で七年ほどになるそうです。家庭環境での時間は変わって来るにせよ、短い……と私は感じます。

それなら銀座でお会いしている殿方との時間は、常連様でも一年ないのかな、なんて考えると、やっぱり御縁のある人って大事だなって思いますね。

この記事を読んでくださっているあなたが、自分の親と食事をしに行こうかな、子どもともっと時間を増やそうかな、妻を旅行に誘うかな、そして銀座のあの子に会いに行こうかな……そう思って頂ければ、本望です!!





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