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幸福とは

 コロナ時代を迎えて、早一年半以上。世の中の変遷は凄まじいもので、それに伴い私達ホステスにも大きな変化がありました。

 その一つに、この一年半で結婚・出産して家庭を持つホステス仲間が非常に増えた事が挙げられます。勿論、昼職に方向転換するホステスも増えましたが、家庭を持つホステスが増えた事に私は驚きを隠せませんでした。そんな彼女たちを分析してみると、なるほど孤独からの回避が原因らしい……。独り身にとって自粛生活はかなりきついです。本来、人間は人と関わり合う事で生きてゆく社会性のある生き物ですから。他者と触れ合いコミュニケーションをとる動物が、一人の時間に縛られると、その心は蝕まれます。家に居るのに疲れを感じるのは、孤独と戦っているからなのです。コロナの時代に鬱病と自殺者が増えたのは、人同士が触れ合い交流する機会が奪われたから。そう考えると、家庭を持つ事は妥当だと理解できます。

 実家から銀座のクラブに通っている女性なんてほとんどいません。独り暮らしが大半です。勿論、同棲しているから一人じゃない、ってホステスもいるでしょう。でも結婚というのは同棲と違いちゃんとした契約なのです。だから籍を入れる。そして子どもを産むのです。冷めてしまえばいつでも関係を解消できる「恋人」では曖昧。だからきちんとしたカタチを存在させ、彼女たちは安心を得たのです。

 この一年半の間に、私は何度「おめでとう!!」の言葉を口に出したでしょう。私の仲間が次々と結婚し、出産してゆく中で「それはそれで幸せかも」と思います。銀座という華やかな世界を卒業出来ずに、目標も夢なくだらだらと仕事を続けるのは、ある意味、非常に危険な事。勿論お給料は良い、素敵なお客様とお会いし言葉を交わす事が出来る。しかし残酷なもので、私たちは年齢を重ねていきますから。女として、家庭を持ちたかった、子どもを産んでみたかった、と気付く事になるかもしれません。極端な話、独りで死を迎えるとき後悔するかもしれません。仕事と家庭を天秤にかける時期も人生の中で必要。結局、何が幸せかは人によりけり。一度きりの人生の中で、自分にとって何が幸福なのか――。それはその人の心が決めるものなのです。





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