マイクロソフトが相互運用性の拡大戦略に転換、開放性向上へ
【レドモンド(米ワシントン州)21日PRN=共同JBN】マイクロソフト社は21日、これまでの技術・ビジネス慣行を改めて当社製品の開放性を向上させることによって、開発者、提携先、顧客ならびに競合他社のために、相互運用性、機会および選択の拡大推進に向けた広範囲に及ぶ路線変更を発表した。
具体的には、マイクロソフトは当社の企業向けハイボリューム製品全体にわたって、次の4つの新たな相互運用性の原則ならびにそれに対応した行動を実施する。
(1)オープンな接続性の確保、(2)データポータビリティー(データ可搬性)の推進、(3)業界標準規格のサポート強化、ならびに(4)顧客およびオープンソース業界団体を含む業界全体によるオープンな参加の推進。
マイクロソフトのスティーブ・バルマー最高経営責任者(CEO)は「これらの方針は、当社が自社製品および技術に関する情報を共有してきた従来の方法を大きく変えるもので、重要な一歩となる。当社は過去33年間にわたって、世界全体で数十万社もある提携先と大量の情報を共有しながら、この業界の構築に貢献してきた。しかし、本日の発表は、さらに高い透明性の実現に向けた大きな展開を意味している。当社の目標は、自社製品の開放性をさらに高めながら、当社の技術に関するさらに多くの情報を共有することによって、顧客や開発者のために業界全体にわたって相互運用性、機会ならびに選択の拡大を促すことにある」と語った。
マイクロソフトのレイ・オジー最高ソフトウェア開発責任者(CSA)によると、今回の発表は、個人や企業が求めてきた容易な情報共有の重要性を反映したものである。企業向けアーキテクチャーで異種システムの混在が当たり前のようになっている今日、アプリケーションやサービス間の相互運用性はすでに必須条件となっている。
オジーCSAは「顧客は特にマイクロソフトを含むすべてのベンダーに対して、オープンなインタフェースやデータを使ってアプリケーションの効果的な統合、またはまったく新しいソリューションの構築が柔軟にできるようなソフトウェアやサービスを求めている。当社製品の開放性を高めることによって、当社は開発者に対して、顧客のために技術革新と価値実現の機会を高めることができるようにする」と語った。
シーメンスの本社研究・技術・ソフトウェア・エンジニアリング担当バイスプレジデントを務めるマンフレッド・ワングラー氏は「マイクロソフトが本日発表した原則と行動は、相互運用性の推進に向けた同社の努力を大きく拡大したものである。マイクロソフトは過去数年間にわたって、IEC評議会における当社との協力を含めて、相互運用性の面で大きな進歩を遂げてきた。今日のニュースは、相互運用性に対するマイクロソフトのコミットメントを新たなレベルに引き上げたものだ」と語った。
ノバルティスファーマで情報管理責任者を務めるトマス・ボーゲル氏は「マイクロソフトが本日発表した相互運用性の原則と行動は、より広範なIT業界に利益をもたらすものだ。マイクロソフトのハイボリューム製品でオープンな接続性が確保されるなら、それはソフトウェア開発者の圧倒的大多数に機会の拡大をもたらすとともに、相互運用性、機会、選択の一層の拡大を市場で推進するのに役立つだろう。利害関係者によって促されるこのような原則と行動の進化に向けて、建設的、体系的、多角的な対話が進むことを当社も期待している」とコメントした。
同日発表された相互運用性の原則と行動は、次のマイクロソフト製ハイボリューム製品に適用される。Windows Vista(.NET Frameworkを含む)、Windows Server 2008、SQL Server 2008、Office 2007、Exchange Server 2007、Office SharePoint Server 2007、ならびにこれらすべての製品の今後の新バージョン。新しい相互運用性の原則の実現に向けてマイクロソフトが取ろうとしている具体的な行動の主なポイントは次の通り。
※マイクロソフトのハイボリューム製品に対するオープンな接続性を保証。サードパーティー製品との接続性を強化するために、マイクロソフトは、他のマイクロソフト製品で使われている当社ハイボリューム製品のすべてのアプリケーションプログラミングインタフェース(API)と通信プロトコルに関する資料を当社のウェブサイト上で公開する。開発者は、この情報を利用するためにライセンス料、ロイヤリティーその他の料金を支払う必要はない。この文書利用の開放によって、サードパーティー開発者は、他のマイクロソフト製品と同様にマイクロソフトのハイボリューム製品への接続性を実現することができる。
※その直後の段階として、マイクロソフトは、3万ページに及ぶWindowsクライアント/サーバー・プロトコルを本日からMSDNウェブサイト上で公開する。これらの情報は、以前はマイクロソフト・ワークグループ・サーバー・プロトコル・プログラム(WSPP)またはマイクロソフト・コミュニケーション・プロトコル・プログラム(MCPP)に基づくトレードシークレットライセンスがなければ利用できなかった。Office2007その他のハイボリューム製品などそれ以外の製品のプロトコル文書も、数カ月以内に順次公開する予定。
※マイクロソフト社の特許権の対象となるプロトコルについてはウェブサイト上に表示する。これらの特許ライセンスはすべて、合理的かつ公平な条件に従って、安いロイヤリティーで提供する。特許ライセンスの検討に関心がある方々を支援するために、マイクロソフトは各プロトコルの対象となるマイクロソフト特許および特許アプリケーションの一覧表を閲覧できるようにする。
※マイクロソフトは、この種のプロトコル実現の開発または非営利目的の頒布によりオープンソース開発者を訴えない旨の約款を提供する。この種の開発者は、この文書を無償で使って製品を開発することができる。これらのプロトコル実現を営利目的で頒布したい企業は、マイクロソフトから特許ライセンスを取得することができる。また、この種の特許ライセンスを取得していないディストリビューターからこの種の実現を取得した企業も同様に取り扱う。
※マイクロソフトが業界標準規格および拡張規格をサポートする方法を文書化。透明性を向上させながら相互運用性を推進するために、マイクロソフトがそのハイボリューム製品の規格をサポートする場合は、さまざまな形で広く配備されている製品全体にわたる堅牢性、整合性、相互運用性の実現に向けて、他の主要な実現者と協力する。
※マイクロソフトは、他社によるこれらの規格の実現との相互運用性に影響を及ぼすマイクロソフトの拡張規格を含めて、この種の規格をサポートする方法を文書化して開発業界に提供する。この文書は当社のウェブサイト上で公開するが、この情報を利用する際にライセンス料、ロイヤリティーその他の料金を支払う必要はない。この行動によって、規格を実現しようとするサードパーティー開発者は、この規格がマイクロソフト製品でどのように使われているかを理解し、顧客のために相互運用性を向上させることができる。マイクロソフトは、マイクロソフト社の特許権の対象となる拡張規格の一覧表をウェブサイト上に表示する。これらの特許ライセンスはすべて、合理的かつ公平な条件に従って、安いロイヤリティーで提供する。
※Office2007を強化して文書形式の柔軟性を強化。ユーザーによる文書形式の選択性を強化するために、マイクロソフトはOffice2007に含まれるWord、ExcelならびにPowerPointの各アプリケーション用に新たなAPIを設計し、開発者による他の文書形式へのプラグインを可能にするとともに、これらの文書形式による保存をユーザー自身がデフォルト設定できるようにする。
※オープンソース相互運用性イニシアチブの開始。市販または業界ベースのオープンソース技術とマイクロソフト製品との相互運用性の向上を推進、実現するために、このイニシアチブによって、ラボ、プラグフェスト、テクニカルコンテンツならびに共同開発を継続する機会を含めて、各種のリソース、施設ならびにイベントを提供する。
※業界によるアウトリーチと対話の拡大。オンラインの相互運用性フォーラムを通して、顧客、開発者ならびにオープンソース業界との対話を続ける。また、文書形式相互運用性イニシアチブ(Document Interoperability Initiative)を通して、広く配備されている文書形式相互のデータ交換への取り組みを開始する。
IEC評議会(Interoperability Executive Customer Council)は2006年に設立された諮問機関で、全世界40社以上の企業の最高情報/技術責任者ならびに政府機関関係者で構成されている。IEC評議会は、この相互運用性の原則と行動に基づくマイクロソフトの作業を指導する。マイクロソフトの新たな相互運用性の原則の全文、ならびにマイクロソフトが取ろうとしている行動の全一覧表は下記のウェブサイトで閲覧できる。
http://www.microsoft.com/presspass/presskits/interoperability/default.mspx
本日発表した相互運用性の原則と行動は、マイクロソフトならびにIT業界の法律的な立場が大きく代わったことを反映している。これらは、欧州第一審裁判所(European Court of First Instance, CFI)が2007年9月に提示した責任と義務を満たそうと努力を続けてきた当社にとって、重要な前進を意味する。
マイクロソフトのゼネラルカウンシルを務めるブラッド・スミス氏は「昨年9月にCFIがこの判決を下した直後から、マイクロソフトは欧州の法律を完全に遵守するために必要なあらゆる手段を取ろうと努力している。当社が発表するこのイニシアチブを通して、マイクロソフトのハイボリューム製品全体にわたって、CFIの判決の相互運用性に関する部分の原則を実現する責任を果たしている。当社は今後数週間かけて、CFIの判決のそれ以外の部分への取り組みを進めるとともに、欧州委員会に完全な情報を提供することにより、あらゆる段階にわたって当社の取り組みを評価してもらう」とコメントした。(共同通信PRワイヤー)
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- [通信・端末]マイクロソフトが相互運用性の拡大戦略に転換、開放性向上へ 2008/02/22 金曜日