小池安雲の色の魅力
第88章
桜から、新緑の季節になりました。芽吹きの色合いはいつも目を楽しませてくれますね。芽吹きと言えば、4月は新入生や新社会人などが多く誕生する月でもあります。会社に初出勤したのははるか遠い昔(!)ですが、あのドキドキ感は今でも忘れられません。
何故、あんなにドキドキしたのか。きっと、未知なる世界で、慣れない緊張感があったからなのでしょうね。これまでの自分とは異なるフィールドに足を踏み入れるとき、人は緊張します。そのドキドキ感を表す色こそ、新緑である若草色・フレッシュグリーンです。
フレッシュグリーンはグリーンとイエローが合わさった色。例を挙げれば、今の季節だと桜の若葉がまさにそうです。一般的なグリーンは、もっと色濃く椿の葉のような色のことを言います。
では、グリーンとフレッシュグリーンの、意味の違いは何でしょうか? いずれも「居場所」の色なのですが、そのニュアンスが少し異なるのです。グリーンは、落ち着く居場所の色です。長年よく馴染んでいて、「どこだっけ」と頭を使って探すこともなく、ボーっとしていてもたどり着ける場所。たくさんお酒を飲んで酔っぱらってもちゃんと家には帰っていたときの、あの感じです(呑兵衛の例えですみません)。その落ち着く場所にイエローが加わると、フレッシュグリーンになります。
イエローは、刺激、好奇心、知識、面白さの色。落ち着いたグリーンに、刺激が一気に加わります。「これから何か面白いことが起こるんじゃないか」という期待感がイエローであれば、「何か収拾のつかないことが起こったらどうしよう」という不安感もイエロー。新しい世界に踏み出すときに、ワクワクとドキドキが訪れるのはこうした理由があるのです。
未知に対する不安感はあって当然なので、それを好奇心や知識欲が上回れば、不安なドキドキは楽しいワクワクに変わります。フレッシュグリーンは、これまでの安心感や信頼感に、好奇心と期待というテイストが加わって新たな味になるような「新しい場所」の色なのです。居場所に加わる人も、迎える人も、お互いの反応を楽しみながら「これからの居場所」を作っていきましょう。
ここでいつものワンポイントアドバイス。フレッシュグリーンはその名の通りフレッシュさを表す色なので、重厚感を表したいときには向きません。貫禄を見せたいときにうっかり使ってしまわないように、くれぐれもご注意あれ!
2019年4月17日付・第2469号紙面より