小池安雲の色の魅力
第76章
すっかり春の陽気になりました。みなさま、いかがお過ごしですか? 私は花粉に鼻をムズムズさせながら、あたたかな季節を楽しんでいます。冬のあいだは滅入っていた気持ちも、春になると自然と明るくなりますね。入学や入社など、新しい生活を始める方の多いこの時期が、日差しとあたたかさに溢れる春で良かったです。
しかし、そうは言っても山あり谷ありなのが人生。あたたかな日があるように、厳しい寒さの日もあります。自己分析のツールである色彩心理を学んでいて良かったと思うのは、厳しくて辛い日の方です。人は、うまくいっているときにはそれほど悩みません。とても落ち込んでいたり、怒りがあったり、やるせない気持ちになったときにこそ、客観的な自己分析が役に立つのかなと思います。
落ち込みを表す色は、インディゴ(濃紺)やブラックです。「目の前が真っ暗になる」という表現がありますが、まさにそんなイメージですね。見通しが悪く、暗い色合い。気分が下を向いているときほど、明るい色よりも暗くて落ち着いた色を好みます。
では、落ち込んでしまったときはいったいどうすれば良いのでしょうか?
大切なのは、無理に元気になろうとしないことです。例えば、打ちひしがれているときに元気を出そうと思って真っ赤な服を着たりするのは、風邪のときに焼肉を食べるようなもので逆効果です。弱っているときは強引に明るくなろうとせず、暗さや落ち込みを素直に受け容れましょう。
ネイビーは落ち込みの色でもありますが、外敵から守ってくれる色でもあります。傷ついた心を包み込み、外からの攻撃を遮断してくれるのです。常に窓を開けっぱなしにしておくと落ち着かないように、気持ちを休めたいときには心にカーテンをかけましょう。ネイビーやブラックは、カーテンの役割を果たしてくれます。そして、十分に休息できて元気になってきたなと感じたらカーテンを開けましょう。そのころには、明るい色を違和感なく身に着けられるようになっているはずです。落ち込みは、やすらぎとセットだと思って受け容れてみてください。暗さを拒絶するよりもずっと、元気になれます。
ここでいつものワンポイントアドバイス。ネイビーやブラックは外敵から身を守るカーテンですが、カーテンであるがゆえに外からは中が見えません。「みんなが私のことをわかってくれない」なんてことにならないよう、くれぐれも使いすぎにはご注意あれ!
2018年4月17日付・第2433号紙面より