小池安雲の色の魅力
第68章
いよいよやってまいりました、本格的な夏! キャンドルは蝋を熱で溶かすため、作業部屋は酷暑になります。冷房は必須ですね。
作業と言えば、この数年はハンドメイド業界が盛況で、私の周りでもものづくりをする人が増えてきました。いま国は一億総活躍社会の実現を掲げていますが、この先は一億総クリエイター社会になるのではと想像をしています。
近年はキャンドルのクリエイターも非常に増えてきて、さまざまな作品を目にするようになりました。お洒落なキャンドル、変わったキャンドル……それぞれ魅力があります。そうなると「私がキャンドルを作る意義は何だろう?」という疑問がわいてきます。
ふと、「何のためにものづくりをしているのかな」と考えるようになりました。
ものづくりを色に例えるとターコイズ(青緑)です。技術を生かし、クオリティの高いものを作り、供給する。ターコイズにはセンスというキーワードもあるので、独自の世界観や技術などが人の目を惹きます。ただ、ここで難しいのは「興味を持ったからと言って、その興味がずっと続くとは限らない」ということです。人は飽きやすいため、従来のファンを満足させつつも新しい風を取り入れていく必要があります。
実はターコイズには伝承という意味もあります。昔からずっと存在し続けている伝統的なものは“飽きられる”というハードルを乗り越えてきたツワモノたち。そこで、伝統に関わる方たちにお話しを伺ってみると「伝統的と言われるものは、当時は時代の最先端だった。伝統的なもの=古いものというのは間違いで、常に新しい表現を生み出すことこそが伝統につながる」とおっしゃっていました。まさにこれが、クリエイター魂! 非常に感銘を受けました。
では、常に新しい表現をしていくにあたって軸となるものは一体何でしょうか? ターコイズを構成している色で考えてみました。イエローは知恵と工夫、好奇心と喜び。ブルーは自分の想いや感性の色。「好奇心を持って知恵を絞り、想いを表現していく」という言葉になります。「面白いものを作りたい」「表現力を高めたい」というワクワク感が大事ですね。私も、常にフレッシュな気持ちで制作に励みたいと思います。
ここでいつものワンポイントアドバイス。ターコイズには完璧主義の傾向があります。クオリティにこだわりすぎるあまり、作品が永遠に世に出ない……なんてことにならないようにご注意あれ!
2017年8月17日付・第2409号紙面より