小池安雲の色の魅力
第66章
梅雨の季節になりました。雨が続くと気分がすっきりしない……という方もいらっしゃるかもしれませんが、私は自宅仕事が多いせいか雨の音を聞きながら仕事をするのが好きです。しっとりと家が包まれて、外の世界から柔らかく遮られているようで集中できます。この、程よく周囲から隠れている状況って、何だか安心しますよね。カフェなども、座席同士が近いより観葉植物などで適度に視界が遮られていた方が、周りの視線が気にならないので落ち着きます。
このように、周囲から遮断されてたった一人で過ごしたいと思うことが私はよくあります。みなさんも、誰にも会わずに一人で過ごしたくなることはありませんか?
こういうことを言うと「人嫌いなのか」とか「何か嫌なことでもあったのか」と心配されますが、精神は(おそらく)正常で、誰かに会うことも大好きです。ただ、素敵な人たちに会って楽しく過ごすことが好きなのと同じように、一人きりで過ごすのが好きなのです。
この、一人で過ごしたい欲求の色はバイオレット。バイオレットは「わかりにくい」と意味を持っているので、周囲からの力を遮る働きをします。例えるならば、透明なのに外からだと中が見えにくいガラスのような感じです。そこにあるのはわかるのだけれども、見えにくいもの。では、見えにくいものの正体は何かというと、心の奥底だったり精神だったりという、目では見えないけれども存在するものです。
そう、一人で過ごす時間は自分の心を感じるひとときなのです。日々仕事や家事などに勤しんでいると、自分自身よりも他者や環境に目が向くことが多いですよね。必要なことではありますが、自分と向き合う時間がないと次第に心は忙しくなくなっていきます。パソコンの電源をずっと入れっぱなしにしているような状態です。たまに自分だけの時間を作りましょう。通勤ついでに散歩してもいいし、お風呂にゆっくり浸かる時間でもいいです。パソコンの電源を切って休めるようなものです。バイオレットは精神の落ち着きという意味もあります。ちょっとした時間が、オーバーヒートした心をすっと穏やかにしてくれるでしょう。
ここで、いつものワンポイントアドバイス。バイオレットは一人の時間を作ってくれる色ですが、使い過ぎると一人の時間というエネルギーが強すぎて孤独な状況を生んでしまいます。気がついたら誰もいなかった……なんてことにならないよう、使いすぎにはご注意あれ!
2017年6月17日付・第2403号紙面より