小池安雲の色の魅力
第58章
秋になりました。少し肌寒くなって家に居るのが心地良くなり、物思いに耽るのにも最適な季節ですね。
私はかつて会社員だったのですが、会社を辞めて十年ほど経ちました。当時はいくら働いても満たされないと感じ、では自分は何をすれば満足するのだろうかという疑問から色彩心理を学び始め、それが今では仕事のひとつになっているので人生は面白いですね。
ただ、会社を辞め、何年かの学びを経て何となく独立はしたものの、当時はまったくと言っていいほど仕事がありませんでした。そもそも交遊範囲はさほど広くなく、コネもありません。それでも、十年経った今でも何とか仕事があるのは何故なんだろうと考えてみました。
私の仕事はほぼ口コミで生まれています。私自身も、ものを購入する時や仕事を頼む時は、詳しい方に情報を教えてもらうことが多いです。では、教えてもらったあと、例えば仕事になるかどうかの基準は何でしょうか。
私は、人は“信頼”で動いているのではないかと考えるようになりました。
この人だったら良いものを作ってくれる、期日を守ってくれる、いいものを紹介してくれる……人を動かしている理由の多くは信頼感です。もちろん、信頼が逆の「信じていたのに裏切られた」「そんな人じゃないと思っていたのに」という憎しみに変化してしまう場合もあります。SNSが発達したこの頃では「あの人がこう言っていたから」「あの人のオススメだから」という基準でものを選ぶ機会も増えました。それだけ、人やものに対する信頼が目に見える時代に来ています。
信頼は、色で言うとグリーンです。グリーンは誠実さ、率直さ、正確さを表します。すなわち、誠実で率直で正確であれば信頼を得られやすいということです。また、グリーンは継続の色でもあるので、コツコツとした積み重ねも信頼に繋がります。たとえ今は成功していなくても、続けていれば信じてくれる人が増えるでしょう。そしてグリーンの一番のポイントは安心安全であること。安心が信頼を呼び、信頼が成長や発展を呼び込みます。緑生い茂る木のように、一晩では大きくならなくても、じっくりと根をはっていればいずれは大木になれるはず。地味だけれども確固たる力を持つ“信頼”は、すぐに育たないからこそ価値があるのかもしれません。
ここでいつものワンポイントアドバイス。グリーンは安定の色ですが、安定しすぎると頑固になってしまいます。たまには新たな刺激もお忘
2016年10月17日付・第2379号紙面より