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小池安雲の色の魅力

第56章

 暑い日が続きますね。天気予報の最高気温を見ると、体温以上の気温に達する地域がたくさんあることに驚きます。「こんなにも暑い日が続くと暑さに耐性がついて肉体が進化するのではないか」と、ついSF的な発想をしてしまうほどの暑さです。このような発想をすること自体、頭がすでに暑さに侵されているのかもしれません。

 気温が高いと頭がボーっとして冷静に物事が判断しにくい、という経験はどなたにでもあるのではないでしょうか。冷静という字は冷たくて静かという言葉から成るように、物事を理性的に捉えるためには冷たさが必要です。しかし、冷たさだけでは熱を持たないため、そもそもの原動力が生まれません。どんな物事にも必ず、熱さと冷たさの両方が必要になってくるのです。

 最近、数学者であり随筆家でもあった岡潔氏の本を読んでいます。岡潔は、数学界で未解決だった三つの超難問を一人で解いたという天才数学者です。いったいどうやって解いたのか? ひたすら考え、そして何も考えられなくなり、頭がゆるんだときにふっと解決できるとありました。動と静の反復です。智力に関しての言及もあります。智力を養うのは日本刀を鍛えるように熱して冷やしを繰り返すことが大事であり、冷やしているときに智力が働き始めるとのこと。学びとは何かと考えると、知識を得たり行動をしたりと熱量を増す方へ意識を向けがちですが、必ずしもそうとは限らないのですよね。

 私の講座でも、授業が終了後すぐに「オススメの本を教えてください」とさらに学ぼうとする勉強熱心な生徒さんがたくさんいらっしゃいます。しかし、クールダウンを考えると、学習のあとは少しなまけるくらいでちょうど良さそうです。

 岡潔は「数学の本体は調和の精神である」と説いていますが、色も同じです。レッドに代表される暖色が行動だとしたら、ブルー系の寒色は鎮静。この二色が合わさると、バイオレットの“真実”というキーワードに辿りつきます。“調和”を表すインディゴはバイオレットと同じくレッドとブルーの混色ですが、この反対色はゴールドで “叡智”を表します。熱さと冷たさのバランスをうまくとりながら、その先にある叡智にたどりつきたいものですね!

 ここで、いつものワンポイントアドバイス。寒色をインテリアに取り入れると涼しく感じるようになりますが、保守的な傾向が増えるため家から出たくなくなるかもしれません。くれぐれも、使い過ぎにはご注意あれ!


2016年8月17日付・第2373号紙面より


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