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小池安雲の色の魅力

第145章

2024年になりました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。こうして原稿を書いている指先が凍えるほど寒い季節になってまいりました。元日に起こった能登半島地震で被災した方が一人でも多く、早く、温かで安全な場所にいられますようにと願わずにはいられません。十数年前になりますが、友人とともに珠洲や穴水を訪れました。能登は、日本酒あり、焼酎あり、ワインあり、豊富な海鮮あり…というまさに酒飲みにはたまらない素晴らしいところです。土地の人はみな親切で、たまたま出会って意気投合した方が、ご自宅の古い蔵を案内してくださったこともありました。私が美味しい牡蠣をほおばっている間に、友人は輪島塗を体験して素敵な作品を仕上げていました。黒い瓦の日本家屋が軒を連ねる街並みは格好良かったです。

そんな記憶を思い出しながら、復興支援団体に寄付をしました。訪れたことのある土地を思うと、心の痛みとともに、思い出の温かさが増すように思います。それだけ、「体験してきた」という事実は大きな影響を及ぼすのでしょう。

あたたかな記憶や懐かしさを表す色はオレンジです。夕焼けを見るとなぜか「懐かしい」という感じがしますよね。これは人に共通するふるさとの意識です。さらにこの色は、相手を気遣う、思いやるという性質も持っています。楽しい記憶や懐かしい思い出が、相手を愛しく思うことにつながるのは自然なことです。

天才数学者であり随筆家でもあった岡潔は、著書「春宵十話」のなかで“人の心を知らなければ、物事をやる場合、緻密さがなく粗雑になる。粗雑というのは対象をちっとも見ないで観念的にものをいっているだけということ、つまり対象への細かい心くばりがないということだから、緻密さが欠けるのはいっさいのものが欠けることにほかならない”と記していました。自分に関わりのある人を大事に思う気持ちは当然のこと、もし関わりがなかったとしても「これがもし自分の家族だったら、家だったら」と感じることが、頭で考えるだけではない行動を促し、欠けを埋めていくのでしょう。復興のための現実的な支援を行いつつも、オレンジ色の温かな気持ちで相手を想い、無事を祈るということも忘れずにいようと思います。

ここでいつものワンポイントアドバイス。オレンジは優しいがあまりに、愛情が過ぎるとおせっかいになりがちです。親切の押し売りにならないように、くれぐれも使い過ぎにはご注意あれ!


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