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小池安雲の色の魅力

第135章

 春になりました。桜の季節ですね! これまでは何気なく通り過ぎていた軒先に花を見つけて「ここに桜の木があったんだ」と、以前からそこに植わっていた木に初めて気づくことがよくあります。存在は変わらずそこにあるのに、何かのきっかけで見え方が変わるというのはとても面白い体験です。

 私はカラーセラピストとしてお客様のお話を伺うのですが、「そういう視点があったのか!」と、いつも新鮮な発見があります。つい、自分の考えが一般的であるかのように感じてしまいますが、まったく同じ考えの人は世の中に存在しませんよね。常に柔らかな頭でいるのが大事だなと肝に銘じています。
頭を柔軟に保つために、何か習慣にしてらっしゃることはありますか? 私は、アートが見方の訓練になるのではと思い始めました。特に現代アートと言われるものは「いったい何だこれは!?」と、わけがわからないような作品もあるのですが、作者の意図や背景がわかると俄然新しい世界が見えて面白いです。もっとアートの「見え方」を知りたい!と思っていたところ『感性でよむ西洋美術(伊藤亜紗著、NHK出版)』と出会いました。著者の伊藤亜紗さんは美学が専門ですが、『手の論理』など身体との関係性の著書も多く、アートを体感として捉えて非常にわかりやすいのです。

 例えば、遠近法を使ったルネサンスを“視点が統一されていて奥行きがある絵”、ピカソに代表されるキュビズムを“こちら側に飛びだしてくる絵“というくだりがありました。目に見える世界を、奥行きがあるものか飛び出してくるものか?という分類で見たことがなかったのでとても新鮮です。散歩に行き、花にカメラを向けると「これは飛び出して見えて動きがあるからキュビズムっぽい」「花壇に整然と植わっている花はルネサンスっぽい」という見え方ができて、日常に楽しみが加わりました。

 これまでの視点に新たな見方が加わる色はイエローです。まぶしい光が差し込んでスポットライトが当たるように、新たな世界を提示してくれます。スポットライトは、当たれば目立ちますが、当てなければ暗いままです。いかにそこにある存在を見出せるのかが、世界を面白く感じるコツなのかもしれません。

 ここでいつものワンポイントアドバイス。イエローは新しい見方をもたらしてくれる色ですが、視点が増えすぎて混乱することも起こり得ます。くれぐれも、使いすぎにはご注意あれ!


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