小池安雲の色の魅力
第116章
暑い日が続きますね。昔は「冷房は体に良くない」「電気代がもったいない」と言われましたが、今は「暑さを我慢しない」という風潮になったので、遠慮なく毎日エアコンのお世話になっています。体を冷やすグッズの種類も増えて、マイクのようなハンディサイズの扇風機をよく見かけるようになりました。昔からあるものが、少し視点を変えるだけで新たなヒット商品になるのが面白いですね。私も、昔からあるものを見直すきっかけがありました。着物です。恥ずかしながら私は着物に疎く、着たのは七五三と成人式と結婚式のときくらい。浴衣を着るのは数年に一度という具合です。かつてアメリカにホームステイした際、日本人ならみんな着物を自分で着られると思われていることを知り、少し恥ずかしくなったのを覚えています。大人になると、着物はお金がかかるものだと知り、ますます縁遠くなりました。
それが「着物を着ると体が楽」「全然苦しくない」「もう洋服に戻れない」というほど着物にハマっている知人の勧めにより、無重力着付け®なるものを習ってきました。見せるためではなくて日常に着るための着付けをマスターする講座です。動きやすく暮らしやすい着付けというのが売りなのですが、まさに! とても楽で、肩こりもなくなって、なんと習ってから今まで毎日ほぼ浴衣で過ごしています。着物=外出着という視点が普段着に切り替わったことで着物へのハードルが下がり、一気に好きになりました。この気持ちを色で表すと、バイオレットからマゼンタ(赤紫)への変化です。
着物のような、歴史あるものを表す色はバイオレットです。深みと高貴さがあるのですが、どうしても近寄りがたい印象になります。そこに活動的で現実的なレッドが加わると、マゼンタ(赤紫)に変化します。マゼンタは実用と継続の色です。私が着物に抱いていた、高貴で近寄りがたいバイオレットな思いに、現実的で動きやすいレッドが加わったことにより、実用的で毎日着ても疲れないというマゼンタになりました。
近寄りがたく思えても、活用の仕方さえわかれば一気に馴染みのあるものに変化する…とマゼンタに教えてもらった気がします。
ここでいつものワンポイントアドバイス。マゼンタは品格と実用性を兼ね備えた力強い色ですが、だからこそ他者に有無を言わせないパワーがあります。マゼンタを使いすぎると威圧感を与えてしまうので、使いすぎにはくれぐれもご注意あれ!
2021年8月17日付・第2553号紙面より