小池安雲の色の魅力
第104章
8月になり、急に暑くなりました。暑いのは苦手なのですが、長い梅雨が明けて本来の夏が戻ってきたことは嬉しいですね。夏は夏らしくあること、当たり前が普通に訪れること、それらがこんなにありがたいと思うのは、日常が様変わりしているからでしょうか。個人的にも、制作しているキャンドルの百貨店での催事が、新型コロナウイルスの影響で日程が何度か変更され、ようやく無事に会期を終えることができました。キャンドルは通販でも買えますし、ネットを通じてコミュニケーションは取れるのですが、やはり直接お目にかかってお話しできる感動はひとしおです。近況報告をしたり、エールを送り合ったりと、対面で仕事をすることの素晴らしさを再確認した日々になりました。
毎回、お越しになるお客様とお話ししていると、時々の傾向や共通項が見えてきます。いまは先行き不透明な時期だからか、多くの方が「本当に大切なことは何か」「自分が本当にやりたかったことは何か」「これから、どうやって生きていきたいのか」と、心の底に問いかけるような日々を過ごされていました。人は、切実なときや必要性のあるときに意識が変わると言われます。まさにいま、多くの方の意識が変わっている最中なのだと肌で感じました。
意識そのものを表す色は、ブラックとホワイト(クリア)の二色です。この二色は、形のないものの象徴。意識は形のないものですが、意識から思考が生まれ、思考から感情が生まれ、感情から現実が生まれるため、意識は形を生み出している根源と言えるでしょう。白黒つけるという言葉があるとおり、目の前の選択は意識が源になっています。いま、多くの人が心の奥底を意識するようになっているのは、絶望の黒を知って希望の白を見出すような時期だからかもしれません。暗い場所であれば光のありかを見つけやすいもの。この時代だからこそわかる希望と未来がありそうです。そのためにもしっかりと暗さを見つめつつ、見えている光を掴んでいきましょう。暗闇のブラックは可能性の宝庫という意味合いもあります。暗くて見えないところでも、光を当てればたくさんのチャンスがそこに眠っているのが見えるはず。
ここでいつものワンポイントアドバイス。ブラックは無意識の本心に気づく手助けをしてくれる色ですが、内面に意識を向けるために外を遮断する性質があります。保守的になっているなと感じたら、使いすぎにはご注意あれ!
2020年8月17日付・第2517号紙面より