小池安雲の色の魅力
第103章
緊急事態宣言があけて、緊張状態を保ちながらも外出可能な日常が戻ってきました。私も、ドキドキしながら実に数ヶ月ぶりに都心に行ってまいりました。たくさんの人が行き交う、かつては日常だったその光景が非常に新鮮で、不思議な気分です。自粛期間中はみんなが外出を控えていたので、孤独について話す機会が多くありました。「一人で家に引きこもっていても平気」か「人に会えず、会話がない状態が辛い」か、あなたはどちら?という話題です。ご自身はどちらのタイプだと思いますか? 私の周りでは、結果は五分五分になりました。私は元々自宅での作業が主だったせいか、外出自粛中でも生活は普段とあまり変わらずに「私は一人でいるのが大好きだから、孤独でもまったく問題ない」というタイプでした。ところが、ふと読んだ本に「大勢のなかにいるからこそ孤独を感じる」と書いてあるのを見て、ドキリとしました。私が一人でいるのが好きな理由は、実は「大勢のなかの一人という分離感を感じずに済む」という、消極的な理由かもしれないと思い至ったのです。
思い返せば、人に会わない期間もSNSやメールなどを通じて、間接的にコミュニケーションを取っていました。私が一人でも大丈夫だと感じていたのは、あくまでも気が向いたときに誰かとオンラインで繋がれる環境にいたからなのです。
コミュニケーションを表す色はブルーです。ブルーは、言語や伝達を司り、意思と感情の疎通をサポートします。かたや、一人でいることの寂しさや、存在を認められたいと願う色はイエローです。この二色が合わさると、場や人間関係を表すグリーンになります。「孤独から抜け出してコミュニケーションを取りたい」と思ったときに場が生まれるというのは、非常に興味深い流れですね。場所は物質的なスペースであるのと同時にきっと、人が安心出来る精神的なよりどころでもあるのでしょう。裏を返せば、心のよりどころという場所さえあれば、たとえ一人であろうとも孤独を感じずに済むということになります。グリーンは信頼を表す色でもあるので、日々の信頼関係が大切な場所を育んでいくのかもしれません。実際に人に会えるようになったこの時期にこそ、交流を深めていきたいですね。
ここで、いつものワンポイントアドバイス。グリーンは安心と落ち着きを提供しますが、居心地が良すぎて冒険しづらいという側面も。腰が重いなと感じるときは、使いすぎにご注意あれ!
2020年7月17日付・第2514号紙面より