将来の心房細動管理への道、ATHENA試験の重要性強調
【ブエノスアイレス21日PRN=共同JBN】世界心臓学会議(WCC)で21日開かれたロンドンのセントジョージ大学臨床心臓学科のジョン・カム教授主催の「心房細動管理の新たな見通し」と題する記者会見で、不整脈の最も一般的な形態である心房細動の将来の管理法に向けた道であるして、新たに発表されたATHENA臨床試験の結果の重要性が強調された。報道発表は以下を参照。
http://www.prnewswire.com/mnr/sanofiaventis/33333/
この研究に関与しなかったハーバード大学医学部ブリガム女性病院TIMI(血栓溶融)研究グループの上級研究員、クリストファー・キャノン教授は「ATHENAは心房細動管理のパラダイム変更を示す真にランドマーク的な研究だ。心房細動は大変多い病気で、これまでの治療オプションは症状の緩和と害のないことを祈ることに集中するだけで、これまでの抗不整脈剤にとっての問題だった。心臓病による入院や死亡が非常に大幅に減少し不整脈による死亡が45%、心臓病による死亡が30%減るのだから、ドロネダロン(dronedarone)は心房細動の第1選択治療薬になるだろう」と語った。
ATHENA研究の結果は先週(2008年5月15日)に、米サンフランシスコでの心拍学会第29回科学セッションで、シュテファン・ホーンローサー教授が報告した。この研究結果はドロネダロンが心臓病による入院、すべての原因による死亡のリスクを24%(P=0・00000002)と大幅に減少させ、研究の主要到達目標を達成したことを示している。主要到達目標の結果はすべての事前特定臨床的関連サブグループと合致していた。
ATHENA試験で偽薬と対比した「Multaq(登録商標)」の最も多かった悪性事象は胃腸への影響(26%対22%)、皮膚障害(10%対8%。主として発疹)、血中クレアチニンの増加(4・7%対1%)だった。血中クレアチニン増加のメカニズム(腎臓尿細管レベルでのクレアチニン分泌の阻害)は十分明確にされた。偽薬に比べると、Multaqは不整脈を進行させるリスクが低く、うっ血性心不全による入院の増加はないことを示した。2つの研究グループ間では研究薬剤の服用による研究中止率は同程度だった。
心房細動は入院、死亡の主な理由で米国で約250万人、欧州連合(EU)で450万人がかかっており、高齢化によって公共保健上の増大する問題として浮上している。心房細動患者は死亡の危険が2倍、脳卒中とうっ血性心不全を含む心臓合併症のリスクが増大する。
ATHENA研究は心房細動患者を対象にした最大の二重盲検、無作為方式の研究で37カ国、550カ所以上で実施され、合計4628人の患者が参加した。ランドマーク的なATHENA試験はMultaq第3相臨床開発計画の一部として行われた初の罹患率/死亡率研究で、ほかに5件の多国間臨床研究が含まれていた。重症のうっ血性心不全患者で最近の代償不全がある患者を対象に行われた当初研究のANDROMEDAと心房細動に関する4件の国際研究-EURIDIS/ADONIS、ERATO、それに継続中のDIONYSOS試験である。
▽心房細動/心房粗動について
心房細動は入院、死亡の主な原因で、米国では約250万人、EUでは約450万人がかかっている。心房細動財団は心房細動患者の数が今後20年で倍増するとみている。適切な管理をしないと、心房細動は脳卒中、うっ血性心不全のような重症の合併症を起こす恐れがある。
心房細動は心房が調整されずに不規則に拍動する状態で、脈が不規則で速くなる(つまり不整脈である)。心房細動は異常に速い脈拍が心房で起こることである。この脈拍はほかの心臓病(例えば心膜炎、冠状動脈疾患、心筋症)の人でもしばしば起こる。心房粗動はしばしば悪化して心房細動になるが、数カ月から数年続くこともある。
血液が完全に心房から拍出されないと、たまってクロットになることがある。血液のクロットが心房で形成されると、心臓を出て脳の動脈をふさぎ、脳卒中を起こすことがある。その結果、脳卒中の約15%は心房細動から生じる。
心房細動の最も一般的な症状は心悸高進(速くて不規則なばたばたする動きや胸、首の衝撃感)、息切れ、めまい、胸が重かったり締め付けられるような感覚などである。症状を起こさなかったり、通院中に記録されなかったりする心房細動を患者が経験していることがあるので、この障害は診断されるよりも多いことがある。
▽ATHENA研究について
ランドマーク的なATHENA研究は無作為、偽薬方式の国際的なマルチセンター研究で、心臓病による入院とすべての原因による死亡を予防することによって罹患率、死亡率を減少させる心房細動患者管理の標準的な基礎療法に加える治療法について初めての評価を行った。この研究には4628人の患者が含まれ、心房細動の抗不整脈治療に関する最大の結果研究である。
ATHENA研究の目的は、心臓病による入院に伴うすべての原因による死亡率という主要複合到達目標について、Multaqの利点を偽薬と比較して示すことだった。事前特定の副次的到達目標は、すべての原因による死亡、心臓病による死亡、心臓病が原因の入院だった。研究の副次的到達目標を越えてMultaqは心房細動、心房粗動患者でレートコントロール、抗血栓剤を含む標準療法に加えると心臓病による死亡のリスクは30%(p=0・003)という大幅減少を示した。Multaqは不整脈による死亡も45%(p=0・001)減少させ、ドロネダロン・グループでは偽薬に比べすべての原因による死亡数も少なかった(16%)(p=0・17)。心臓病による最初の入院はドロネダロン・グループでは25%(p=0・000000009)減少した。事前特定安全性到達目標は治療から生じた悪性事象の発生率(治療から生じた悪性事象の観察時間)で、すべての悪性事象、重症の悪性事象、研究薬の投与中止に至る悪性事象が含まれていた。
研究対象の心房細動、心房粗動患者は75歳以上(心臓病のリスク要因がある人もない人も含む)か、75歳以下で少なくとも1つの追加的な心臓病リスク要因(高血圧、糖尿病、心臓病歴、左心房の大きさが50mm以上か左心室の駆出分画が40%以下)がある人だった。代償障害心不全の患者は研究から除外された。患者は無作為でMultaq400mgBID投与グループと偽薬投与グループに分けられ、最大フォローアップ期間は30カ月だった。
患者が募集された国はアルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、チリ、中国、チェコ、フィンランド、ドイツ、ギリシャ、香港、ハンガリー、インド、イスラエル、イタリア、マレーシア、メキシコ、モロッコ、ニュージーランド、ノルウェー、フィリピン、ポーランド、ポルトガル、ロシア、南アフリカ、シンガポール、韓国、スペイン、スウェーデン、台湾、タイ、オランダ、チュニジア、トルコ、英国、米国。
▽Multaq(登録商標;一般名ドロネダロン)について
ドロネダロン(商品名Multaq)は心房細動患者用の治験新治療薬で、サノフィ・アベンティス(Sanofi-aventis)が心房細動、心房粗動患者の予防、治療のために発見、開発した。ドロネダロンは多経路遮断剤で、カルシウム、カリウム、ナトリウム経路に効果があり、抗アドレナリン特性がある。ドロネダロンはヨウ素基を含まず、臨床試験では甲状腺、肺に対する毒性がある証拠は示さなかった。
新しいATHENAの臨床データに基づいて、サノフィ・アベンティスは2008年第3四半期中に欧州医薬品審査庁(EMEA)に登録文書を、米食品医薬品局(FDA)に新薬申請(NDA)を提出する予定である。
▽サノフィ・アベンティス(Sanofi-aventis)について
サノフィ・アベンティスは有力な世界的医薬品会社で、すべての人の生活を改善するための治療ソリューションを発見、開発、販売している。サノフィ・アベンティスの株式はパリ(ユーロネクスト:SAN)とニューヨーク(NYSE:SNY)で上場されている。
(共同通信PRワイヤー)
前後の記事
記事バックナンバー
- [国際情報]将来の心房細動管理への道、ATHENA試験の重要性強調 2008/05/22 木曜日