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心臓血管障害が主な死因、アテローム血栓症登録研究データ

 【ニース(フランス)15日PRN=共同JBN】欧州脳卒中会議に提出された2年間にわたるREACH登録(継続的な健康を目指しアテローム血栓症を減らすための患者登録研究)の新データによると、脳卒中の発作後に死亡した人の大部分(73%)は脳卒中でない心臓血管(CV)イベントで死亡する。全体の死亡率は4・45%で、うち3・23%が脳卒中でないCVイベントによる死亡である。

 REACH登録の2年間のデータは、2次的なイベント(CV死亡を含む)の危険が脳卒中と一過性脳虚血発作(TIA)もしくはTIAの既往患者で非常に高いことを示している。

 REACH登録は、ひとつ以上の血管床でアテローム血栓症の有病率が高いことを示している。すなわち冠動脈疾患(CAD)患者の4分の1、脳血管障害(CVD)患者の5分の2、末梢動脈障害(PAD)患者の5分の3が他の動脈にもアテローム血栓症を持っている。REACH登録データはまた、CVD患者の現実生活環境での治療の質、量、範囲が不十分であることを浮き彫りにしている。これら患者の虚血性リスク管理を改善することが入院や死亡を防ぐために必要とされている。

 REACH登録患者の約28%はベースラインとしてCVDと診断されている。CVD患者の約40%は複数の動脈疾患を持っている。ベースラインのCVD患者人口のうち71%は脳卒中の発作を経験、51%がTIA、20%はその両方を経験している。

 CVD人口の2年間のデータは非致死性脳卒中の発作率が高いことを示している(5・9%)。2年間の脳卒中、心筋梗塞(MI)、CV死亡のリスクは全CVD人口の11・5%だった。CVDの経歴を持つ患者は主要有害心イベント(MACE)と入院(2年間で20%以上)のリスクがかなりある。

 ドイツ・ミンデンのハノーバー大学医学部ミンデン病院神経内科部門ヨアキム・ローター教授は以下のように語っている。

 「CVD患者は脳卒中再発と他のアテローム血栓性イベントの危険が高い。REACH登録はさらに、これら安定型脳卒中患者のほとんどが非脳卒中のCVイベントで死亡するリスクにさらされていることを示している。リスク要因、併存疾患、2次的予防セラピーの利用、ガイドラインの順守を普及させることのすべてがイベント再発率に影響する。さらに2年間のデータは、アテローム血栓性イベントのリスクがこの安定型患者人口で高いままであることを示している。TIAは適切な予後診断で将来アテローム血栓性イベントの危険性が脳卒中患者と同じように高いとして、外来患者ベースで処置しうるのにしばしば軽度脳卒中として見過ごされる。過小措置は世界中に共通しており、ガイドライン順守は心臓疾患と脳卒中による死亡を防ぐため強化されなければならない」

 CVDは大頸動脈と頭蓋内動脈疾患で全虚血性脳卒中の20-30%の原因である。他の原因には心臓塞栓症(25%)、細小血管障害(20%)、潜源性脳卒中(注1、2)が含まれる。高血圧は脳卒中と極めて関係の深い危険要因である。CVDは世界中の健康問題であり脳卒中の発症は世界中で増加している。

 このことは先月「脳血管疾患」(注3)で初めて公表されたREACH登録で極めて高い危険要因のプロフィールとCVD患者のさらなるアテローム血栓症疾患の危険性の表明の重要性を示している。

 パリのビシャクロード・ベルナール病院循環器内科のガブリエル・ステグ教授はREACH登録科学評議会として、「REACH登録は世界のアテローム血栓症疾患の現実社会における重荷について訴え続ける。CVDのケースではさらなる分析によって医師が長期抗血小板物質セラピーや降圧療法などの処置に関する立証ベースのガイドラインを順守する必要性が再び強調されている」と述べた。

 REACHの研究者はこの分析に加えて2008年欧州脳卒中会議で、脳卒中やTIAの患者で冠状動脈イベントの危険に関するポスターを提出した(脳卒中やTIA患者の冠状動脈イベントの危険:健康(REACH)登録継続のためのアテローム血栓症の縮図からの2年間の追跡データ:REACH登録研究委員としてトゥーズ・E・ローター・J、アルバート・MJ、ゴトー・S、ヒル・MD、アイヒナー・F、ステグ・PG、バート・DL、マス・JL)。MIと脳卒中でない血管性死亡の発生率は年間約1%だが、さらなる冠動脈疾患(CAD)を持つ患者のリスクは2%から2・5%となり、複数の血管疾患のリスクが増すことがはっきりした。

 ▽REACHの目標と規模
 REACH登録の全体的な目標はアテローム血栓症による脳卒中、心臓発作、関連リスク要因の評価、管理を改善することである。最大規模で地理的に最も広い範囲にわたるアテローム血栓症リスク患者の世界的な登録研究で、6地域(中南米、アジア、中東、オーストラリア、欧州、北米)の44カ国で約6万8000人の患者を集め、約5000人の医師が研究者として参加している(注4、5)。

 REACH登録には広い範囲の患者が含まれており、アテローム血栓症のリスクがある人の健康状態と治療、病状の監視、病気の負担度の判定が記録されている。REACH登録に含まれている患者は高コレステロール、高血圧、喫煙、糖尿病などアテローム血栓症につながるリスク要因をいくつか持っているか、心臓発作、脳卒中、PADの病歴がある人である。REACH登録への参加は厳密に自主的である。

 さらに、REACH登録は現実の生活環境に基づいており、いくつかの診療科(循環器科、神経科、内科、血管科、医院ベースの初期治療医師)にわたってアテローム血栓症の全般的な理解を高めることを目指しているので、現実世界でのこの病気の負担をより徹底的に評価できる。

 ▽心臓発作、脳卒中、PADの根本的な原因
 アテローム血栓症は血管壁でプラーク(アテローム)が破裂して血液凝固(血栓)ができたときに起こる。プラークは脂肪酸、コレステロール、カルシウムなどでできている。

 プラークの破裂とそれに伴う血液凝固の発達は体内のさまざまな場所で動脈の部分的あるいは完全な閉塞を起こすことがある。心臓の血管が部分的あるいは全面的に血塊でふさがれると、その結果、心臓発作が起こることがある。脳では同じプロセスが脳卒中もしくは数分しか続かないTIAを起こすことがある。体内のほかの場所ではこのプロセスは心臓発作や脳卒中の重要なリスク要因である足の動脈血流の減少または閉塞、PADや心臓発作、脳卒中の重大な危険要因につながることがある。
 アテローム血栓症は心臓発作、脳卒中、PADを結ぶ共通の糸である。

 注
(1.) Grau AJ, Weimar C, Buggle F et al. Risk factors, outcome, and
treatment in subtypes of ischemic stroke: the German stroke data
bank. Stroke 2001;32:2559-2566.
(2.) Adams HP Jr, Bendixen BH, Kappelle LJ et al. Classification of
subtype of acute ischemic stroke: definitions for use in a
multicenter clinical trial. TOAST. Trial of Org 10172 in Acute
Stroke
Treatment. Stroke 1993;24:35-41.
(3.) Rother J, Alberts MJ, Touze et al. Risk factor Profile and
Management
of Cerebrovascular Patients in the REACH Registry Cerebrovasc Dis
2008;25:366-374.
(4.) DL. Bhatt, PG. Steg, EM. Ohman, AT. Hirsch, Y. Ikeda, J-L. Mas,
S. Goto, C-S. Liau, A-J. Richard, J. Rother, PWF. Wilson, on
behalf of the REACH Registry Investigators. International prevalence,
recognition, and treatment of cardiovascular risk factors in
outpatients with atherothrombosis. JAMA 2006;295:180-189.
(5.) PG. Steg, DL. Bhatt, PWF. Wilson, R. D'Agostino, EM. Ohman, J.
Rother, C-S. Liau, AT. Hirsch, J-L. Mas, Y. Ikeda, MJ. Pencina,
S. Goto, on behalf of the REACH Registry Investigators. One-year
cardiovascular event rates in outpatients with atherothrombosis. JAMA
2007;297: 1197-1206.

(共同通信PRワイヤー)


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