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英インペリアル、高齢者の高血圧症治療で死亡、心臓病が大幅減少

 【ロンドン3月31日PRN=共同JBN】シカゴで開かれている米国心臓学会(ACC)で3月31日に報告され、同時にニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに掲載された新たな研究によると、高齢患者の血圧を下げることで総死亡数を5分の1、心臓病の発症率を3分の1減少させることができた。

 英インペリアル・カレッジ・ロンドンの科学者のコーディネーションで行われた参加患者3845人の「超高齢者高血圧試験(HYVET)」は80歳以上の患者だけを対象に血圧降下の効果を調べた最大の臨床試験である。患者は偽薬か利尿インダパミドSR(スローリリース)1・5mgと1日1回ACE(アンギオテンシン変換酵素)阻害剤ペリンドプリルの錠剤を投与された。

 この研究は、治療効果には総死亡率の21%(p=0・02)減少、脳卒中による死亡率の39%(p=0・05)減少、致死性、非致死性の心不全の64%(p<0・001)減少、心臓病発症の34%(p<0・001)減少が含まれていることを示している。これらの効果はフォローアップ開始後1年以内に明らかになった。

 総死亡率の減少は新たな予想外の結果だった。これまでの試験では、80歳以下の患者で血圧を下げると脳卒中と心臓病が減少することは示されていた。しかし、これまでの小規模で結論の出ていない研究も80歳以上の患者で血圧を下げると脳卒中が減少することを示唆していたが、総死亡率は減少せずむしろ増加した可能性がある。

 2007年7月、治療を受けている人の総死亡率と脳卒中が大幅に減少していることが観察された後、中立的なデータ監視委員会の勧告により、この試験は中止された。この試験の最終結果は脳卒中死亡率の大幅減少を示しているが、脳卒中全体の30%減少は統計的有意性に全く達していなかった(p=0・06)。80歳以上の人では脳卒中の最大で半数は致死的であり、致死的な脳卒中の減少は重要な所見である。

 この研究の首席研究者であるインペリアル・カレッジ・ロンドン高齢者医療グループのクリストファー・ブルピット名誉教授は「この研究より前には、医師は高血圧症の超高齢者の血圧を下げる治療にもっと若い人の場合と同じ効果があるかどうか確信が持てなかった。研究結果は80歳以上の患者の多くは治療によって大きな恩恵を受けることを明白に示している。人間は長生きするようになり、80歳代やそれ以上の人が増えているので、これはよいニュースだ。心臓病が安全な形で減少し、総死亡率が減少するのは大変うれしい」と語っている。

 研究者たちは80歳以上の人の高血圧を治療する利点について臨床医の間にある疑念をこの所見が一掃することを期待している。

 この試験のコーディネーターであるインペリアル・カレッジ・ロンドン高齢者医療グループのナイジェル・ベケット博士はさらに、「高血圧症の超高齢者の多くは、治療が助けることになるのかどうか医師たちに確信が持てないために、いまは高血圧の治療を受けていない。この研究の結果、医師たちがわれわれのプロトコルに従ってこのような患者の治療を行うようになることを期待している」と述べた。

 試験は中止されたが、薬剤による治療を受けていた患者を対象にした延長試験が治療の長期的な効果を評価するために行われている。

 2001年に始まったこのダブルブラインド、偽薬方式の試験で世界13カ国の高血圧症の患者(ここでは収縮期血圧が160-199mmHgと規定されている)が無作為配分された。試験参加者の平均年齢は83歳7カ月だった。

 患者は偽薬かインダパミドSRと150/80mmHgの目標血圧を達成するのに必要な場合はそのほかにペリンドプリルの錠剤を1日1回投与された。患者の平均フォローアップ期間は2年余で、そのときまでに偽薬患者の20%、投薬患者の48%が150/80mmHgの目標血圧を達成した。フォローアップ期間がこれより長かった患者では、より多くの投薬治療を受けた患者が目標血圧を達成した。

 HYVETはインペリアル・カレッジ・ロンドンの科学者が世界各地の同僚たちと協力してコーディネートした。中心的な試験は英国心臓財団とセルビエから資金提供を受けた。

 (注)
 1.高血圧と脳卒中について
 -脳卒中はイングランドとウェールズで3番目に多い死因である。国家統計局によると、2004年の75-84歳の死者の11%、85歳以上の死者の14%は脳卒中によるものである。

 -英国では毎年約15万人が脳卒中になっており、ほぼ4分間に1人の割合である。

 -脳卒中患者の約3分の1は発症後6カ月以内に死亡し、その大半は最初の1カ月に起こる。

 -脳卒中後の障害は自宅で暮らす重度障害者の最も多い原因である。

 -脳卒中には2つのタイプがある。

a.出血性-脳内の血管から血液が脳組織に漏れることで起こる。

b.虚血性-血管をふさぐクロット(血塊)で起こり、その結果として脳の一部に対する血液供給が止まり、それによって脳組織に損傷を及ぼす。

 高血圧は血管の漏出、破裂と血管内のクロット生成の危険性を高める。高血圧は血管壁損傷の危険性を高め、血管内に自然にクロットが生成される危険性を高める。

 -80歳以上の高齢者は世界で最も人口が急増しているグループであり、英国では現在、総人口の4%を占めているが、2050年までに約11%に増加すると見込まれている。 脳卒中のリスクは年齢とともに増加し、一部の推定では55歳以降は10年ごとにリスクが2倍になることが示唆されている。

 -英国では国家保健サービス予算の約4%が毎年脳卒中関連のサービスに使われている。
 2.インペリアル・カレッジ・ロンドンについて
 インペリアル・カレッジ・ロンドン-2007年タイムズ高等教育大学格付けで5位にランクされている-は科学ベースの教育機関で、教育、研究の優秀さで評価が高く、最高の国際的な質を誇る学生1万2000人、スタッフ6000人を擁している。カレッジの革新的な研究は科学、医学、工学、経営学間のインターフェースを活用して、ダイナミックな企業文化に基づく、生活の質と環境を向上させる実際的なソリューションを提供する。

 ウェブサイト:http://www.imperial.ac.uk

 これらの所見について討議するため3月31日中央欧州標準時間午前10時、米東部夏時間午後4時にシカゴでプレスブリーフィングが開かれる。電話番号や生のストリーミングについての詳細はACCプレスオフィスへ。

 詳しい情報の問い合わせは以下へ。
 www: www.imperial.ac.uk/press

(共同通信PRワイヤー)


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