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バッテリー用LTO特許ライセンス、ハイドロとテクニフィンが提携

 【モントリオール(カナダ)20日CNW=共同JBN】カナダの電力会社ハイドロ・ケベック(Hydro-Quebec)と南アフリカのライセンス業務企業のテクニフィン社(Technifin)は20日、リチウムイオン・バッテリーとしてよく知られるチタン酸リチウム・スピネル(型)酸化物(LTO)技術に関する両社の知的所有権(IP)のライセンスに関連するIPコラボレーション契約を結んだと発表した。

 電気的輸送法で急成長中の市場を持つLTO技術は、リチウムイオン・バッテリーの陰極として利用すると、長期的な安全性と高いライフサイクルの両面でますます魅力的になっている。この数カ月にわたる国際的調査グループや各種企業のプレスリリースは、この技術と関連するIPに強い商業的関心を示している。ハイドロ・ケベックやその他企業の技術論文やプレスリリースは、LTO 技術、特にサイクルライフ、急速充電時間、比類ない安全性などいくつかのその種で最高の利点の概要に触れてきた。

 ハイドロ・ケベックとテクニフィンがそれぞれのLTO知的所有権(IP)をライセンス向けにプールするとの決定は、世界のバッテリーおよび自動車産業から急成長中の需要に対応する基盤となる。これら産業は高品質のLTO素材で急速かつ広範囲の基盤を持つ市場参入ができる信頼できるLTO資源を求めている。技術移転とノウハウは、バッテリー製品技術の急速かつ効率的な実行を可能にするハイドロ・ケベックの研究者の支援を受けることができる。数々のライセンスが最近、IPプール・ポートフォリオ内の特許に許諾されている。

 充電可能なリチウムイオン・バッテリーは、文字通り世界を変えている。今日の携帯電話、ラップトップ・コンピューター、ハイブリッド車や電気自動車は、リチウムイオン技術がなければ存在しない。LTO技術が提供する比類ない能力は、電気自動車やハイブリッド自動車用バッテリー、スマートグリッド・アプリケーション向け固定エネルギー貯蔵など無数の新しいアプリケーションに恩恵となる。

 ハイドロ・ケベックとテクニフィンのLTO特許は、LTO技術に対する強力な世界的保護となる2つの個別の特許権グループで構成する。第1のグループはテクニフィンの特許であり、世界的に著名な科学者であるマイケル・サッカレー博士が南アフリカの科学産業研究会議(CSIR)に在籍中の1994年に発明したLTO陰極のリチウムイオン電池に関する基本的利用法をカバーしている。第2のグループは、ハイドロ・ケベック研究所IREQのカリム・ザグヒブ博士が1995年に認可されたLTOの能力をカバーしている。ザグヒブ博士は最終的にLTO技術の優れた側面を開発、改良し、特許を取得した。

 ▽LTO技術について
 チタン酸化リチウム・スピネル酸化物(LTO)はLi4Ti5012として知られ、リチウムイオン・バッテリー用の魅力的な陰極材料である。それはリチウム金属の能力を上回る1・5ボルト(V)で動作するので、陰極としてリチウム・グラファイト、LiC6を使う通常のシステムと比較すると、驚異的な安全性を備えるバッテリー・カップル(正極と陰極の組み合わせ、対)となる。バッテリー・カップルはLTO/LEP(スピネル型マンガン酸リチウム)、LTO/LMNO(スピネル型マンガン酸リチウム・ニッケル酸化物スピネル)、LTO/LFP(リン酸鉄リチウム・オリビン)が含まれる。スピネル型LTO内のリチウムイオンの動きを許す3次元空間は例外的に高い移動率があり、特にナノサイズのLTO粒子が利用される際にそうである。さらに、充電と放電中に発生するリチウムの挿入反応と抽出反応は、それぞれ結晶格子に何ら目立った収縮/膨張もなく起こり、さらに高いサイクルライフとなる。グラファイト(372 mAh/g、グラム当たりミリアンペアアワー)のそれと対象的に低い量のLTO(175 mAh/g)にもかかわらず、最新のLTO陰極を付けたリチウムイオン電池は、特に安全なリチウムイオン・バッテリーのこれからの新世代に魅力的であり、ハイブリッド電気自動車やその他自動車用機器とともに固定エネルギー貯蔵アプリケーションの動力源となる。

 ▽マイケル・サッカレー博士(Dr. Michael Thackeray)について
 マイケル・サッカレー博士は、米アルゴンヌ国立研究所の名誉研究員、上級科学者である。同博士は南アフリカのケープタウン大学で博士号を取得し、1980年初頭にオックスフォード大学でジョン・グッドイナッフ教授の下で博士研究員として学んだ。その後、同博士は南アに帰国して、1994年にアルゴンヌに移る前に科学産業研究会議(CSIR)のバッテリー部長となった。同博士は現在、電気エネルギー貯蔵センター(米エネルギー省のエネルギーフロンティア研究センターの1部門)・テイラード・インターフェースのディレクターである。同センターはアルゴンヌ国立研究所、ノースウェスタン大学、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校との提携で運営されている。

 サッカレー博士はいくつかの新しいバッテリー化学の発見とこれらシステム向けの素材の考案に貢献し、その一部は世界の業界にライセンス供与されている。同博士は200余りの論文を執筆し、44の特許を所有する発明家である。同博士の研究は、広く出版され、いくつかの国内、国際賞を受けている。その中で特に知られている賞は国際バッテリー協会イーガー賞(2011年)、米エネルギー省R&Dアワード(2010年)、同R&D100アワード(2009年)、電気化学協会(ECS)研究賞・バッテリー部門(2005年)、シカゴ大学ディスティングイッシュド・パフォーマンス・メダル(2005年)、国際バッテリー協会研究賞(1993年)、CSIRアウトスタンディング・アチーバー・アワード(1993年)、南アフリカ物理学研究所シルバー・メダル(1983年)など。サッカレー博士はまた、アフリカ初の国際的に賞賛されているサイエンスパークの記念ウォール(2005年)で顕彰されている。

 ▽カリム・ザグヒブ博士(Dr. Karim Zaghib)について
 カリム・ザグヒブ博士は1990年、インスティチュート・ナチオナール・ポリテクニーク・ド・グルノーブルから博士号を取得し、サフト(Saft)-フランス国防省調達局(DGA)契約(1990-1992年)の下で博士研究員としての研究を始めた。同博士は1992年から1995年まで、当時通産省と工業技術院大阪工業技術研究所の客員研究員だった。同博士は1995年にハイドロ・ケベックに入社し、現在はエネルギー蓄積・変換部門責任者である。同博士は特にリチウム・バッテリーの素材の開発と理解に貢献していることで良く知られ、グラファイト陰極に通じたキム・キノシタ(米バークレー・ローレンス国立研究所)、オリビン正極に通じるミシェル・アルマン(フランスCNRS)、ジョン・グッドイナッフ(米オースティンのテキサス大学)、アラン・モーゲリ(パリ6大学)の各氏と協力している。同博士は1996年、リチウムイオン・バッテリーとハイブリッド・スーパーキャパシターに初めてナノスケールLTOを利用することを提唱した。

 ザグヒブ博士は電気化学協会(ECS)で活躍する会員である。同博士は2009年にエネルギー・テクノロジー部門の研究賞を受け、2011年にECS名誉会員に選出され、最近になってエネルギー・テクノロジー部門長としての任期を終えた。ザグヒブ博士はリチウムイオン・バッテリーの研究でいくつかの賞を受けており、特に国際バッテリー協会(IBA)研究賞(2010年)、電力研究国際協力機構(IERE)研究賞(2008年)で知られる。ザグヒブ博士は150論文の執筆者であり、13の書籍の著者あるいは共同執筆者であり、88の特許を持つ発明家である。

 ▽ハイドロ・ケベック(www.hydroquebec.com)について
 ハイドロ/ケベックは世界的な公益企業であり、電気を発電、送電、配給している。同社の唯一株主はカナダ・ケベック州政府である。同社は第一義的に再生可能な発電選択肢を開発しており、特に水力発電に力を入れるとともに独立系の発電会社からの購入を通じて風力発電の開発を支援している。同社の研究所であるIREQは、エネルギー効率、エネルギー蓄積、その他エネルギー関連分野のR&Dを実施している。ハイドロ・ケベックは研究に毎年1億ドル余りを投資している。同社は特に溶融塩、リン酸リチウムイオン、ナノチタン酸塩など先端的素材に関する熱心な研究を含めて、30年余りにわたってバッテリーの研究を行っている。同社はより速く、より何回も充電できる安全でハイパフォーマンスのリチウムイオン・バッテリーの開発を支援している。プラグイン車両が将来成功するには主としてバッテリーに依存する。イノベーション努力は高出力バッテリーと高エネルギー・バッテリーの双方をカバーする。

 ▽テクニフィンとCSIR(www.csir.co.za)について
 テクニフィンは南アフリカの科学産業研究会議(CSIR)が全額出資している企業であり、CSIRに帰属する特許を保有して、ライセンス供与している。CSIRはアフリカの有力な化学・技術研究・開発・推進機関の一つである。CSIRは南アフリカ国民の生活の質を向上するため、方向性のある多数分野の研究、技術革新とともに産業・科学開発を行っている。

 CSIRは研究に毎年2億ドル余りを投資して、1974年以来バッテリー研究に関与してきた。CSIRは高温の塩化金属ナトリウム(ゼブラ)電池の発見と早期開発の先駆者であり、充電可能なリチウムイオン・バッテリーの国際的商用化を中心とする知的所有権の早期創造者だった。

 CSIRは世界経済の国家的競争力を向上するため、南アフリカのイノベーションを支援することにコミットしている。科学・技術サービスとソリューションは、各方面の株主を支援するため提供され、新しい技術が商業・社会的利益に対する民間および公共部門でさらに開発、啓発されうるさまざま機会を見つける。

 CSIRの株主は南アフリカ政府であり、科学技術相を通じた委任行為でCSIRを所有している。


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