新日鐵と住友金属が経営統合、海外の事業展開さらに加速へ
新日本製鐵と住友金属工業は22日、来年10月10日に経営統合することを発表した。国内生産基盤の効率化と海外事業の拡大など、事業構造の改革を行い、競争力の更なる強化を目指し、世界シェア獲得をねらう。
両社は2002年にアライアンス契約開始してから、競争力強化策を協同して推進してきた。しかし、最近の鉄鋼事業を取り巻く環境は、(1)新興国を中心とする世界的な鉄鋼需要の増大、(2)エネルギー・環境分野等における高級鋼ニーズの高まり、(3)中国、韓国等での新鋭製鉄所の稼働に伴う競争の激化、(4)ユーザーの生産・販売のグローバル展開の加速、(5)原料の高騰および価格決定サイクルの短期化―などの変化がみられ、これらに対応するため、今年2月に経営統合に向けた検討を進めた。
その間も、円高が急伸するなど、鉄鋼経営環境の変化は想定以上のスピードで現実化している。そのため、両社では、今回の統合基本契約の締結を契機に、統合施策の具体的検討をこれまで以上にスピードアップし、統合効果を早期に発揮できるように取り組んでいくとしている。
合併比率は、新日鐵が「1」、住友金属が「0.735」。新商号は「新日鐵住金株式会社」。
新会社は「総合力世界ナンバー1の鉄鋼メーカー」の早期実現を目標に、(1)鉄鋼事業のグローバル展開、(2)世界最高水準の技術力の発揮、(3)コスト競争力の強化、(4)製鉄以外の分野での事業基盤の強化、(5)企業価値の最大化と株主・資本市場からの評価の向上、(6)総力の結集―の6点を強化する。特にグローバル展開では、グローバル生産規模6000~7000万トンを目指し、海外事業展開を更に加速させるという。6点の施策のうち、1~3までを以下の通り、抜粋する。
1)鉄鋼事業のグローバル展開
○中国、東南アジア、ブラジル、インド等の新興諸国などにおいて、両社が既に展開中の製造・加工・営業拠点の再編と拡充
○海外での鉄源一貫を含む製造販売拠点の強化と新設(アジア地域、米州地域等)
○得意品種の組合せ・相互補完によるユーザーニーズへの総合提案力・サービス力の向上
・自動車分野における薄板、鋼管、棒線、クランクシャフト等の組合せ
・資源・エネルギー分野における鋼管、鋼板等、高級鋼の供給力強化
・鉄道輸送インフラ需要の増加に対応する軌条(新日鐵)と車輪(住金)の総合提案力向上
2)世界最高水準の技術力の発揮
○研究組織の一体化による、R&Dの高度化・効率化・早期化
○ユーザーニーズへの提案力強化
○プロセス革新も含む新製造技術開発
○省エネ・省 CO2 等、地球環境対応技術におけるリーダーシップの発揮
○劣質化する鉄鋼原料の使用技術開発
3)コスト競争力の強化
○操業・製造技術のベストプラクティス共有化によるコストダウン
○製造工程一貫での生産効率化
○製造ライン毎の最適分担による生産性向上
○製鉄所間での連携強化
例:関東(鹿島・君津)、関西~中部(和歌山・堺・広畑・名古屋)、九州(八幡・小倉・大分)等
○原料調達・輸送の効率向上
○設備仕様の共通化等による設備費・修繕費・資材費の削減
○重複資産の圧縮
○資金調達の一元化、子会社を含む資金管理の向上
○内外グループ会社の効率化
○管理間接部門等の効率化および海外展開への人材活用
前後の記事
記事バックナンバー
- [資源・鉄鋼]新日鐵と住友金属が経営統合、海外の事業展開さらに加速へ 2011/09/23 金曜日