スピリット・エアロシステムズ、通年で3%減益にとどまる
【ウィチタ(米カンザス州)5日PRN=共同JBN】スピリット・エアロシステムズ・ホールディングス社(NYSE:SPR)は5日、2008年第4四半期と通年の決算を発表した。同決算は堅調な営業業績、ボーイング社機械工のストライキによる不利益な影響、同社契約勘定推計に不利益な影響を与えた年金所得の低減を反映している。
同社の第4四半期売上高は、ボーイングの機械工によるストライキと契約地域ごとの残りの期間に対する年金所得予測の低減が合わさって当該期の財務結果に影響を与えたことから売上高は6億4600万ドル、営業利益は2800万ドルとなった。
表1.決算概要
(単位:1株当たりデータを除き100万ドル)
第4四半期 12カ月
2008 2007 増減 2008 2007 増減
売上高 $646 $980 (34%) $3772 $3861 (2%)
営業利益 $28 $107 (74%) $406 $419 (3%)
営業利益率 4.4% 10.9% (650) BPS 10.8% 10.9% (10) BPS
純利益 $20 $76 (74%) $265 $297 (11%)
純利益率 3.1% 7.7% (460) BPS 7.0% 7.7% (70)BPS
1株利益(完全希釈後 $0.14 $0.54 (74%) $1.91 $2.13 (10%)
完全希釈後平均株式数
(百万) 139.2 139.6 139.2 139.3
2008年第3と第4四半期のストライキと年金の影響にもかかわらず、通年の売上高は37億7200万ドル、営業利益は4億600万ドルとなった。2008年の最初の8カ月間の製造量増加と年間の期間経費減は、2008年第3、第4四半期にストライキと関連するボーイングへの納入減によって相殺された。
2008年第4四半期の純益は、2007年同期の7600万ドル、完全希釈化1株当たり0・54ドルとの比較で2000万ドル、完全希釈化1株利益0・14ドルとなった。2008年通年の純益は、前年の2億9700万ドル、完全希釈化1株当たり2・13ドルに対して2億6500万ドル、完全希釈化1株当たり1・91ドルとなった。2008年当該期と通年の純益は米政府研究活動(R&E)投資税額控除からの恩恵があって、2008年当該期の税経費は800万ドル軽減し、完全希釈化1株利益で0・06ドル増えた。
2008年第3四半期中、同社は最大顧客のボーイング社で起きた労働者ストライキに対応した。国際機械工労働組合(IAM)による労務停止(ストライキ)によって、スピリットは主としてボーイング計画をサポートする特定従業員に対する労働週間短縮スケジュールを実施する措置を直ちに講じた。その結果として、ボーイングに対する当該期の出荷設定納入はストライキ前の納入レベルを下回る63機となり、売上高は4億5100万ドル、1株利益は0・28ドル減少した。ストライキによる2008年通年の影響は72機の納入減となり、その結果売上高で5億400万ドルの減少、1株利益で0・41ドルの減少となった。
同社の米国年金計画は2008年末時点で完全に資金手当てされている。2008年通年の年金資産業績と12月31日測定日における公定歩合引き下げの結果による年金負担増の結果として同社は現在、今後の各期間における非現金年金所得が大きく減ると予測している。減価する年金所得予測は、現行の契約勘定ブロックの収益性にマイナスの影響を与え、2008年第4四半期に2000万ドル、1株利益で0・10ドルのマイナスの累積遡及修正を行った。2008年中の年金計画資産の減少と年金負担増額はまた、当該期における包括的利益で1億8600万ドルの減少をもたらした。
スピリット社のジェフ・ターナー社長兼最高経営責任者(CEO)は「当社の2008年決算は成果とともに問題を抱えた1年を反映している。われわれはその年初に生産速度を速め、開発諸計画で有意の進歩を遂げ、顧客関係を強化、成長させ全社的に堅実な営業実績を保持しながら第3、第4四半期中のボーイング・機械工によるストライキの問題にうまく対処した。われわれは引き続き新しいビジネスを受注し、業界全体で当社ブランドを確立することによって当社戦略を進めていく。当社は1年を通じて、ガルフストリームとロールスロイスと進行したプロジェクトを発表し、エアバス、セスナ、三菱、サウスウエスト航空、コンチネンタル航空と新たなビジネスを受注した。ノースカロライナ州の新しい製造施設は、2009年第1四半期にオープンする予定である」と語った。
同社長兼CEOはさらに「当社戦略は揺るぎないものであり、商業航空宇宙市場のより不安定な時代に進む時期にあっても財政的に堅固である。われわれは顧客と緊密に協力し、業界全体の発展状況を監視しながら2009年とそれ以降を見据えていく」と語った。
スピリットの受注残高は、成長と顧客多様化戦略を追求して大型商用機、地域ジェット機、ビジネスジェット機などの市場部門で新しいビジネスを捕捉したことによって、2008年に50億ドルを超えるまで増加した。2008年末時点の同社受注残高は317億ドルであり、2007年末の20%増加した。同社受注残高は製品契約額、ボーイングとエアバスの公表された期限指定注文の受注残高、さらにはその他顧客から同様注文のそれに基づいて計算される。
スピリットは2008年第4四半期中に契約上の収益性予測を更新した結果、マイナスの累積遡及修正として2700万ドルが生じた。この修正は現在の会計勘定ブロックによる2000万ドルの年金所得の減額、500万ドルの為替レートのマイナス効果、ボーイング787と747-8計画における顧客要求による納入遅延を含むその他出来事からの影響200万ドル、ボーイングにおけるIAMストライキを反映している。同社は2007年第4四半期には、350万ドルのプラスの累積遡及調整を出している。
営業活動によるキャッシュフローは当該期で5800万ドル、通年で2億500万ドルとなった。2007年の同期は7500万ドル、通年で1億8000万ドルだった。新しい開発諸計画に対して続けられる同社の投資は、主として生産前在庫バランスの伸びが収益、得意先前受金、売掛金業績によって相殺された結果を主として反映した。
表2.キャッシュフローと流動性
第4四半期 12カ月
(単位:100万ドル) 2008 2007 2008 2007
営業活動のキャッシュフロー $58 $75 $205 $180
不動産・工場・機材購入 ($61) ($60) ($236) ($288)
流動性 08年12月31日 07年12月31日
現金 $217 $133
現在の長期負債部分と長期負債 $588 $595
年末時点の現金残高は2億1700万ドルで、債務残高は5億8800万ドルだった。同社は当該期において、ボーイングの機械工によるストライキの結果として実行された労働週間短縮スケジュールに対して調整された信用枠から100万ドルを借り、再返済した。2008年末時点で、同社の回転信用枠は6億5000万ドルが引き出されていない。信用枠の約1400万ドルは、財務信用状のために留保されている。同社の信用格付けは、スタンダード&プアーズがBB、ムーディーズがBa3で変わらない。
▽2009年展望
2009年に対するスピリットの売上高は42億5000万ドルから43億5000万ドルの間になると予測されている。これは既に提供されているボーイングの480-485機の航空機納入ガイダンス、787機の納入期待増、2009年に期待される約483機のエアバス納入、非OEM生産活動、ボーイング以外とエアバス向けスピリット社内予測、2008年末レベルを変わらない外貨レートなどに基づいている。
2009年の完全希釈化1株利益は2・15ドルから2・35ドルの間になると予測されており、これは主としてボーイングのストライキの影響を除く大型商用機に対する変わらぬ生産、経費管理、営業効率の向上に対する継続的重視を反映している。
資本支出減、純顧客返済額による営業キャッシュフローは、資本支出を2億5000万ドルから2億7500万ドルの間として2009年通年で総額プラスになる見込み。
表3 財務展望
2008年実績 2009年ガイダンス 変化
売上高 38(億ドル) 42.5-43.5(同) 12%-14%
1株利益(完全希釈) 1.91(ドル) 2.15-2.35(同) 13%-23%
実効税率 30.9% ~33%
(税引き前%)
営業キャッシュフロー 205(100万ドル)
資本支出 236(100万ドル)
資本返済 116 (100万ドル)
*資本支出で2億5000万ドル-2億7500万ドルも純プラス
付属文書
▽セグメント別業績
-胴体システム
2008年第4四半期の胴体システム・セグメントの売上高はボーイング社機械工ストにより2億8820万ドルと前年同期比37・6%減となった。2008年第4四半期の売上高営業利益率は、2008年第4四半期に行った累積遡及修正の赤字のため2007年第4四半期の16・1%から11・3%に下がった。2007年第4四半期に同セグメントは350万ドルのマイナスの累積遡及修正を行っている。
-推進システム
2008年第4四半期の推進システム・セグメントの売上高はボーイング社機械工ストのため前年同期比36・4%減の1億6860万ドルとなった。2008年第4四半期の売上高営業利益率は同期に700万ドルのマイナスの累積遡及修正のため2007年の16・6%から12・6%に下がった。2007年第4四半期に同セグメントは累積遡及修正の赤字200万ドルを処理している。
-ウイング・システム
2008年第4四半期のウイング・システム・セグメントの売上高は前年同期比26・4%減の1億8210万ドルとなった。2008年第4四半期の売上高営業利益率は、同期にマイナスの累積遡及修正1200万ドルが処理されたため2007年の14・6%から4・1%に減少した。累積遡及修正のうち500万ドルは為替変動による差損である。2007年第4四半期には累積遡及修正の赤字500万ドルが処理されている。
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- [航空・宇宙]スピリット・エアロシステムズ、通年で3%減益にとどまる 2009/02/07 土曜日