錦織圭&シャラポワを育てたニック校長らに直撃インタビュー
ニック・ボロテリー校長(写真・WOWOW) 【WOWOW提供】 アメリカ・フロリダ州にあるニック・ボロテリー・テニス・アカデミー。錦織圭が2003年に留学して以来、現在も活動の拠点にしているプロテニス選手の養成学校だ。そんな同スクールの校長を務めるニック・ボロデリーらに直撃した。
1972年にニック・ボロテリーが創立したニック・ボロテリー・テニス・アカデミー(以下NBTA)。NBTAから巣立ったプレーヤーはアンドレ・アガシにピート・サンプラス、マリア・シャラポワなど、いずれもトッププレーヤーばかり。そんなNBTAの校長を務めるニック・ボロテリーが、チーム “Nishikori”を指揮する。
--NBTAを成功させた要因などをお聞かせ下さい。
ニック・ボロテリー(以下ニック):「何年も積み重ねてきた努力、自分と同じ信念を持った素晴らしいスタッフに恵またこと。子供たちからベストなプレーを引き出すのではなく、勝者にするためにやってきました。そのような態度で頑張ったからこそ、子供たちが前進したと思います」
--初めて錦織選手がNBTAに来た時の印象をお聞かせ下さい。
ニック:「当時の圭は、下を向いて日本食が恋しく、言葉もしゃべれなくて他人をまともに見ることすら出来ませんでした」
--そんな内気な少年が、ここまで成長すると思いましたか?
ニック:「正直に言うと予想していませんでした。でもそれは、能力が不足しているという意味ではありませんよ」
--入学当初から変化した点はありますか?
ニック:「以前よりしゃべれるようになりましたね。今ではインタビューを受ける時、しっかり相手を見ることができるようになりました。これはとても良いことです。そして、自分の地元のように、のびのびと振る舞えるようになってきましたね」
--往年の選手と比べて錦織選手はいかがですか?
ニック:「アンドレ・アガシと比較してみましょう。アガシはバックハンドで様々なショットを繰り出し、圭のようにネットプレーはしませんでした。圭はアガシと違い、もっと爆発力を武器にしています。エラーの数はアガシより多いですね。でも現在の時代でテニスをする以上、圭はそのスタイルでやるしかありません。もしアガシが現役だったら、もっと爆発力が求められたし、ネットプレーも必要だったでしょう。圭があの頃プレーしていたら、ベースラインからショットを繰り出す方法で、好成績を残していたかもしれませんね」
NBTAの副校長を務め、錦織のメインコーチでもあるのが、ガブリエル・ハラミロ。通称ゲイブと呼ばれるこの男は、錦織がNBTAに留学する際、錦織の奨学金を出した盛田正明テニス・ファンドと交渉を重ねた人物でもある。ゲイブの努力がなければ、今の錦織の活躍もなかったとも言えるだろう。
--錦織選手の第一印象をお聞かせ下さい。
ガブリエル・ハラミロ(以下ゲイブ):「当時12歳の彼に、選手を選出するプロセスのため、圭にタイブレークで(富田)玄輝相手にプレーさせ、圭は勝とうとした。アガシやサンプラスが、同じ様にプレーしたように……。対戦相手がポイントを落とすのを待たず、自分自身で勝とうとしたことは印象的でした」
--エアKについてのご意見をお聞かせ下さい。
ゲイブ:「エアKと呼ぶハイ・ショットを圭がいつも使うのは、圭のボールを見るスピードが速いから。多くの選手はボールが返ってきて落下しようとする時にバウンドさせますが、圭はそれをしません。ボールを早い段階で打てたり追いつけるからです。圭のようにプレーするには物凄くスピードが必要で、ボールの動きを早くに理解でき、タイミングの良さも必要。圭を真似ようとする人はいますが、不可能だと思いますね」
--来年の錦織選手の活躍を期待してもよろしいですか?
ゲイブ:「来年はトップ20位には入るでしょう。私の中では、トップ10にいけると思ってます。彼は猛スピードで成長していますよ」
ニックやゲイブとともに、錦織を全力でサポートするのが、アカデミーでヘッドコーチを務めるデビッド・“レッド”・エイミー。彼の目から見た錦織圭は、どのように映っているのだろうか?
--錦織選手のプレーを初めて見た印象をお聞かせ下さい。
レッド・エイミー(以下レッド):「圭の最初の印象は若くて手に爆発的なパワーを持っていた。スピードは信じがたいものだった。フォアハンドは、ダイナマイトを積んでるかのようだったね」
--錦織選手の活躍をどのように感じていますか?
レッド:「私のプレーヤーに対する期待はいつも高い。すべて予想通りになったと言ったら嘘になるが、圭の活躍は思ったより早かった。私はチームの一員として、圭には自信を持っていた。だから彼が活躍したと聞いても、驚きはしなかったよ」
--錦織選手がここまで活躍した分岐点をお聞かせ下さい。
レッド:「彼が16、7歳の時にメキシコへ行き、誰も居ない場所でトーナメントを制した。周りに誰も知らない場所で勝つなんて、生易しいことではない。彼にとって、テニスプロ人生のターニングポイント。この勝利が、私たちの期待をさらに高めさせてくれたよ」
“チーム錦織”のマネージャーを務めるのが、オリバー・フォン・リンドリック。校長のニックをトップに、錦織に相応しい人間を集める手助けをすることが彼の役目だ。
--チーム内での役目をお聞かせ下さい。
オリバー・フォン・リンドリック(以下オリバー):「役割は圭に適した人間を選ぶことで、彼のビジネスをサポートすることも仕事の一つ。契約の手助けなどをして、彼に収入が入るようにすることです。当然ながら、役割は変わり続けます。彼が若かった時は、チームを組み立てることだけでしたが、彼が成長するにつれ、ビジネスが絡んできますから」
--マネージャーというお立場で、錦織選手に望んでいることは何でしょうか?
オリバー:「彼の存在をグローバルに広めることです。二つ目は、日々成長していけるように努めること。日本でテニスを広めたい、というのが3点目でしょうね。圭がキャリアの終盤に達した頃に、テニスをする子供たちの人口が今以上に増えて欲しいです。圭の大きなゴールはそこで、我々はそれをサポートしていきたいですね」
WOWOWでは、今季の錦織圭をハイライトで振り返りながら、ジュニア時代の映像や世界トッププレーヤーの錦織評などを交えて錦織の活躍の軌跡と素顔に迫る『WOWOW TENNIS スペシャル 18歳・錦織圭世界への扉~テニス界に衝撃を与えたAIR・Kの快進撃~』を12月21日((22:00~23:30)に放送。また、12月22日には『デルレイビーチ国際 決勝「錦織圭vsジェームズ・ブレイク」』(21:00~22:50)と『アルトワ選手権 3回戦「錦織圭vsラファエル・ナダル」』(27:00~29:00ともにCh.193のみ)、12月23日には『全米オープンテニス 3回戦「錦織圭vsダビド・フェレール」』(24:40~28:20)をリピート放送する。錦織選手が出場する来年の全豪オープンを、WOWOWでは1月 19日から2月1日まで14日連続生中継(※デジタル193ch含む)する。
番組ページはこちら http://www.wowow.co.jp/tennis/top_081029.html
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