作家、出版社と和解、グーグルが著作権協定
【ニューヨーク29日PRN=共同JBN】米国作家協会(Authors Guild)、米国出版社協会(Association of American Publishers, AAP)、グーグル(Google)の三者は、世界の様々な作家や出版社の利益を代表して、「Google Book Search」に参加している米国の主要図書館数館の蔵書のうち、米国内で著作権のある本、その他の資料数百万点のオンライン検索の拡大を可能にする画期的な和解協定を発表した。2年間に及ぶ交渉を経て到達したこの合意によって、作家と米国作家協会が起こしていた集団代表訴訟とともに、AAP会員を代表する出版大手5社が別に起こしていた訴訟も解決することになる。この集団代表訴訟は今後、ニューヨーク南部地区を管轄する米国連邦地方裁判所の承認に従う。
この協定は、数百万冊もの書籍をインターネットで検索できるようにするという大胆な企てである「Google Book Search」による著作物のオンライン利用を拡大することによって、読者や研究者に利益を約束するとともに、作家や出版社のコンテンツをデジタル形式で配信する能力を強化する。この協定によって、著作権所有者の権利と利益が認められ、その知的財産権のオンライン利用を管理する効率的な手段が提供されるとともに、その著作物のオンライン利用に対する補償を受け取ることができるようになる。
この和解協定が裁判所による承認を受けると、次のような利点が実現する。
― 絶版本の利用が増える:米国内の読者がオンラインで著作物を検索、プレビューできるようにすることによって、見つけにくい絶版本を含めて、数百万点もの著作権のある著作物が見つかりやすくなる。
― 著作権のある本の購入方法が広がる:著作権のある多くの本のオンライン利用に対価を払って購入する能力を利用者に提供することによって、出版社や作家の既存の作品に始まった米国内の著作権のある本の電子出版市場をさらに拡大することができる。
― 数百万冊の本をオンラインで機関購読:米国内のカレッジ、総合大学その他の組織に対して、世界で最も有名な図書館数館の蔵書をオンラインで購読する手段を提供することができる。
― 米国の図書館からの無料閲覧:米国の公立図書館や大学図書館の指定されたコンピューターを使って、数百万冊の絶版本の全文をオンラインで無料閲覧することができる。
― 作家および出版社への補償とその著作物の利用管理:グーグルが提供するオンライン利用、ならびに他のプロバイダーが創設した類似のプログラムによって得られた補償金の配分は、新たに創設される独立の非営利団体、ブック・ライツ・レジストリ(Book Rights Registry)が担当する。この団体はこのほか、権利者を特定し、権利者に関する正確な情報を収集・維持し、権利者がこのプロジェクトへの加入または脱退を申請する方法を提供する。
この協定に従って、グーグルは総額1億2500万ドルを支払うことになる。そのお金は、ブック・ライツ・レジストリの創設、作家と出版社から出ている賠償請求の解決、弁護士報酬の補填に使われる。この和解協定によって、米国作家協会と一部の作家が2005年9月20日に起こした米国作家協会対グーグルの集団代表訴訟、ならびに米国出版社協会(AAP)会員を代表するマグロウヒル(The McGraw-Hill Companies, Inc., NYSE: MHP)、ピアソンエデュケーション(Pearson Education, Inc.)および米ペンギングループ(Penguin Group (USA) Inc.、いずれもピアソンの一部、LSE: PSON/NYSE: PSO)、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons, Inc., NYSE: JWa/JWb)、サイモン・アンド・シャスター(Simon & Schuster, Inc., CBSグループ企業、NYSE: CBS.A/CBS)の出版大手5社が2005年10月19日に起こした訴訟が同時に解決する。これらの訴訟は、著作権のある本の一部をデジタル化して検索、表示できるようにするグーグルの計画にとって、また、著作権所有者の明示的な許可なく図書館がデジタルコピーを共有するにあたって、難しい問題を生じていた。
世界各地の米国著作権所有者は、自分の著作物をブック・ライツ・レジストリに登録することによって、機関購読、本の販売、広告収入、その他の実現可能な収益モデルによる補償、ならびにその著作物がすでにデジタル化されている場合は代金の支払いを現金で受け取ることができる。
カリフォルニア、ミシガン、ウィスコンシン、スタンフォード各大学の図書館は、この和解条件の提案に参加してきたが、各館の蔵書を閲覧できるようにする作業も含めて、このプロジェクトへの参加が期待されている。すでにグーグルと共同作業を始めている米国の他の図書館とともに、本の保存、維持、閲覧手段を提供しようとしてこれらの図書館が払ってきた大きな努力は、この協定の実現に向けて重要な役割を果たした。期待されているこれらの図書館の参加によって、この作業が進めば、米国の学生、研究者、読者はますます本を利用しやすくなる。将来はさらに多くの図書館のこのプロジェクトへの参加が期待されている。
米国内の「Google Book Search」利用者は、このプロジェクトにより提供される製品やサービスを購入して楽しむことができるようになる。米国外の利用者にとっても、この種の製品やサービスの提供が本の権利者による許可を受ける必要がない「Google Book Search」の使い勝手の良さは変わらない。
米国作家協会のロイ・ブラウント・ジュニア(Roy Blount Jr.)会長は「本を書くのは大変な仕事である。そして、それに対する報酬を受け取るのはもっと大変な仕事である。読者や研究者のひとりとして、私自身は近くの図書館に立ち寄って、そこで世界の有名な図書館の蔵書を何点も閲覧することができれば、とてもうれしい。一方、作家としての私は、人々が私たちの作品を利用する際に代金を払ってくれたら、それもまた有り難い。今回の決着には大きな意味がある」とコメントしている。
米国出版社協会のリチャード・サーノフ(Richard Sarnoff)会長は「この歴史的な和解は、誰にとっても大きな勝利である。私たちの立場で見れば、この協定によって、デジタル化が急速に進む世界における著作物の利用について画期的な枠組みが創り出され、見つけにくい本の膨大な宝庫をより広い範囲で利用できる方法を提供し、権利者に管理方法と選択権を提供する魅力的な商業化モデルを確立することによって、出版界に利益をもたらす」と述べている。
グーグルの共同創業者で技術部門担当社長を務めるセルゲイ・ブリン(Sergey Brin)は「グーグルの使命は、全世界の情報を整理して、どこからでも利用できて役に立つ情報にすることにある。今日、作家、出版社、図書館とともに、その作業において大きな一歩を踏み出すことができた。この協定は、当事者全員が心から満足できるものだが、真の勝者はすべての読者だろう。世界中の本に埋もれている膨大な知識の宝庫を、すぐ手元で利用できるようになるのだから」とコメントしている。
クラス会員資格の有無に関する情報も含めて、この協定について詳しくは、ウェブサイト(http: //books.google.com/booksrightsholders/)を参照。クラス会員には、米国著作権法で保護されている本その他の著作物の著者である作家(作家サブクラス)、出版社(出版社サブクラス)、ならびにその相続人または継承者が含まれる。
本日10月28日(火曜日)米国東部時間午前10時半からメディア向け電話会議を開催する。この会見に参加するには、米国在住の記者は877-340- 7913に、海外在住の記者は719-325-4845にそれぞれ電話を。オペレーターが出たら、"Authors, Publishers and Google"(作家、出版社、Google)の電話会議に参加したい旨を伝える。
▽米国作家協会について
米国作家協会(Authors Guild)は8000人以上の出版著書のある作家を代表する全米最大・最古の作家団体であり、有力な作家が適正な報酬、効果的な著作権の保護、表現の自由を主張するための組織である。詳しくはウェブサイト(www.authorsguild.org)を参照。
▽米国出版社協会について
米国出版社協会(Association of American Publishers, AAP)は、米国の出版社の全国的な業界団体である。300以上の会員を構成しているのは、米国にある大手商業出版社の大多数のほか、小規模・非営利目的の出版社、大学の出版局、学術団体などです。AAP会員は、あらゆる分野のハードカバーおよびペーパーバック、小学校・中学校・高等学校・専門教育各市場向け教材、学術誌、コンピューターソフトウェア、ならびに電子製品・サービスを発行しています。あらゆるメディアにおける知的財産権の保護、国内外の読書の自由および出版の自由の保護、ならびに読み書き能力の増進は、同協会の最優先課題である。詳しくはウェブサイト(www.publishers.org)を参照。
▽Google Inc.とGoogle Book Searchについて
グーグルの画期的な検索技術は、全世界で毎日、数百万人の人々を情報によって結びつけている。2004年に開始されたGoogle Book Searchによって、今日では百万冊以上の本をオンラインで全文検索することができる。現在、世界各地の2万以上の出版社と29の図書館がグーグルと協力しながら、このサービスを利用して本を販売している。グーグルはシリコンバレーに本社を置き、米国、欧州、アジア各地にオフィスを展開している。詳しくはウェブサイト(www.google.comまたはhttp://books.google.com)を参照。
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- [国際情報]作家、出版社と和解、グーグルが著作権協定 2008/10/29 水曜日