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CVDダイヤ使用レーザー開発を開始、E6と光技術研究所が提携

 【アスコット(英国)14日PRN=共同JBN】英ストラスクライド大学光技術(フォトニクス)研究所の研究者たちは、工業用ダイヤモンドメーカーの英エレメントシックス社(E6)が製造した化学気相蒸着(CVD)ダイヤモンドを組み込んだ最新のソリッドステート・レーザー設計を開発する3・5年のプロジェクトを開始した。エレメントシックスはCVDダイヤモンド合成とそのアプリケーション分野で世界をリードしている。
 ダイヤモンド・ラマンレーザー(Raman Laser)の開発は、例えば水中画像、医療用造影、眼科、がん診断、マルチスペクトル画像など、多くの新しいアプリケーション分野を開発することができる。今回のプロジェクトはストラスクライド大学光技術研究所のアラン・ケンプ博士の指導で行われ、英政府が資金提供している工学・物理科学研究会議(EPSRC)から60万英ポンド余りの寄付によって支援されている。

 ソリッドステート・レーザー材料としてダイヤモンドを利用することは、より大きな出力処理能力を持ち、現在まで利用できない波長で動作して、新しいアプリケーションの道を開く小型でコンパクトなソリッドステート・レーザーへの新たな機会を切り開くことができる。ダイヤモンドはこのアプリケーションに適した光学的、熱的特性のユニークな組み合わせを持ち、これら特性はエレメントシックスが製造する最新の単結晶CVD材料を通じて引き出される。ラマンレーザーは既に例えばシリコンのような材料を使って開発されて通信用に利用されているが、ダイヤモンドの利用はそれら能力を新しい出力水準と波長に進めることができる。

 ▽ラマンレーザーはどのように働くか
 ラマンレーザーは、1922年に発見されたラマン散乱(光)と呼ばれる現象を利用する。光子(フォトン)が物質にぶつかると、光子の小さな断片が物質の原子と互いに作用しあって振動する。そのような非弾性的な衝突において、光子は一定量のエネルギーを得たり失ったりして、異なる波長の光となる。ラマンレーザーは光を振動させて二次的な光を増幅し、システム内のエネルギーを汲み取って干渉性のあるレーザー光を放射する。
 この種のレーザーの重要性は波長を変えうることである。ケンプ博士はこの波長を変えるの能力が「リッチなアプリケーションだが今のところソースが限られていた黄色-オレンジの波長領域へのアクセスを可能にする」と言う。

 現在、多くの商用レーザーは0・8ミクロンから1・1ミクロンの間の波長の近赤外領域で動作し、高性能のレーザー活動のほとんどすべてが行われる1ミクロンの周辺(1・03-1・07ミクロン)に特に集中している。ケンプ博士は「現代のソリッドステート・レーザー工学で最も重要な問題点はおそらく、新しい波長を生み出す方法を見つけることだが、今あるレーザーの利便性とパフォーマンスをできる限り多く残してそうすることである」と語った。

 ▽合成ダイヤモンドの潜在能力
 さらに加えて、現世代の持続的波長ソリッドステート・ラマンレーザーは、熱的な問題のため僅かに数ワットの出力に限られてきた。ダイヤモンドは優れた熱伝導性とともに低い熱膨張係数を持っておりより大きな出力処理能力がある。ケンプ博士は「レーザー工学において特に小型パッケージでハイパフォーマンスを期待する際、最も魅力でないが最も広範な問題は熱の問題をどのように処理するかにある。これは特に高出力のラマンレーザーで問題となるが、それは優良なラマン・コンバーターとなる結晶が一般的に熱伝導性が低いためである。ダイヤモンドが役立つのはこの点である。ダイヤモンドは代表的なラマン活性のある結晶に比べて2、3倍の規模の熱伝導性によって、優れたラマン媒体となり得てより大きな出力電力を生み出すことが可能になる」と語った。さらにダイヤモンドは、現在アプリケーションの潜在能力を広げるために利用されているラマン活性の結晶よりさらに大きく波長を変える。エレメントシックスのテクニカルマネジャーであるクリス・ウォート氏は「物理学研究所のチームは、ダイヤモンドが通常のラマン媒体と比較して高いラマン利得係数とより大きなラマン・シフト能力があることを認めている」と付け加えた。

 エレメントシックスが供給するダイヤモンドの重要な特質のひとつは、超低複屈折を示すことである。複屈折は光の偏光が変化する場合、中間的な光のスピードが変わる時に生起し、レーザー作業をうまく処理するためにはこのことはレーザー空洞の中で注意深く制御される必要がある。ケンプ博士は「エレメントシックスが製造する超低複屈折特性のある単結晶CVDダイヤモンドは、ダイヤモンドのあらゆる光技術アプリケーション、特にレーザー・アプリケーションに向けた真の一歩前進である。われわれはそれによってその他分野のレーザー性能を犠牲にすることなく、ダイヤモンドの例外的特性を開発することができる」と語った。

 エレメントシックスは、今回のプロジェクトの継続期間中研究チームに高品質の単結晶CVDダイヤモンドを提供する。光技術研究所はエレメントシックスと良好な実務関係を持っている。この両組織は英政府支援のマイクロマシンド・ダイヤモンド・デバイス・イニシアチブ(MIDDI)・プロジェクトでこれまでにも協力してきたが、それは例えば単結晶ダイヤモンド・マイクロオプティックスの正確なエッチング遂行能力につながった。

 ▽エレメントシックスについて
 エレメントシックスは、広範なアプリケーションに対する製造産業全体で使用される高品質スーパーマテリアルで世界をリードするサプライヤーである。同社は工学アプリケーションに使われる合成ダイヤモンドや新しいエンジニアリング材料開発の先駆企業であり、それらの工業アプリケーションは例えば光学、機械、熱処理、エレクトロニクス、自動車、通信、医療の各産業に広がっている。同社は売上高5億ドルを上回り、約4000人を雇用しており中国、ドイツ、アイルランド、スウェーデン、南アフリカ、ウクライナ、英国に確立した製造・処理プラントを保有し、世界的な流通網によって支えられている。

 ▽光技術研究所について
 光技術研究所は1995年に設立され、ストラスクライド大学の一部として(研究成果の)商業化を目指す研究部門である。研究所の主要目的は、光技術の分野で学術的研究および産業アプリケーションと開発の間のギャップを埋めることである。研究対象の関心は半導体材料と機器、実用的ですべてソリッドステートのレーザー、マイクロLEDアレイ、特にバイオフォトニクスなどの広範なアプリケーションに向けられている。光技術研究所はストラスクライド大学のグラスゴー・シティーセンター・キャンパスにある。同研究所は産業界と契約したり、協調的研究をしている。同研究所には多数の博士号(PhD)と工学博士号(EngD)課程の学生を抱え、企業にさまざまな技術をライセンス供与している。


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