銅が院内感染防止に有効、独クリニックなど研究結果
【ハンブルク(ドイツ)22日PRN=共同JBN】試練に耐えて試し抜かれたものは時に革新的になりうる-古代ギリシャ時代から既に、銅は非常に抗菌作用があると考えられてきた。この能力が現在、危険な院内細菌との戦いに重要な役割を果たしている。
ドイツ・ハンブルクのバンツベックにあるアスクレピオス・クリニックの全病棟は、世界的に知られるフィールドテストの中で、銅製のドアハンドル、ドアプレート、電源スイッチを装備した。細菌は手から手への接触感染ばかりかドアハンドルやスイッチなどの接触を通じて感染する例が多い。ドイツのハレ・ビッテンブルクにあるマルティン・ルッター大学の科学者たちは現在、初の研究段階でのサンプルを評価中である。結果として、アスクレピオス・クリニック・バンツベックは欧州におけるこの臨床研究のパイオニアになる。
主要な対象は、世界的にクリニックや看護施設で一層多くの患者が病気に罹る危険な耐性菌(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌=MRSA)である。そのまん延を防止するには、伝統的な衛生手段では不十分なことが多い。同クリニックとマルティン・ルッター大学ハレ・ビッテンブルクで関係した科学者によると、最初の研究結果は銅の表面で細菌が生き残るチャンスは顕著に低くなることが示され、これによって今年下半期にフィールドテストが継続される理由になっている。完全な評価は2009年初めになる見込みである。
▽世界的な時間との競争
アスクレピオス・クリニック・バンツベック第1医療部長のヨルク・ブラウン医博(教授)は、「高耐性病因に対する戦いは、新しい抗生物質や大がかりな消毒手段の利用などこれまでの手段では勝てない。われわれは患者の潜在的な危険性を減らすため、新しい方法を開始しなくてはならない」とフィールドテストの動機を説明した。マルティン・ルッター大学ハレ・ビッテンブルクの生物学研究所長であるディートリッヒ・H・ニース博士(教授)も「いくつかの個別の作業グループが実施した科学的テストは、銅の表面が効果的にバクテリアやその他病原菌を殺すことを疑いもなく証明した」と確認した。
アスクレピオス・クリニック・バンツベックはそのフィールドテスト(8週間で2度、それぞれ1週間のサンプル採取)で、世界的な研究プログラムにかかわっている。いくつかの臨床条件による比較研究が計画中であり、あるいは英国、南アフリカ、米国、日本で同時進行中である。バンツベックでは、ドアハンドル、ドアプレート、電源スイッチから採取されたサンプルが、ステンレススチール製の普通の表面と銅合金の表面の両方でこの数週間中に収集された。経験が示すところでは、ドアハンドルとか電源スイッチが最もひんぱんに感染する表面である。
▽欧州だけで毎年5万人が感染被害
深刻な推計によると、50万件余りのそのような院内感染が毎年、ドイツの病院、すなわちクリニック内で発生している。欧州疾病予防管理センター(ECDC)によると、欧州全体で300万件の院内感染事例があり、その内5万件は致命的である。MRSAのような耐性菌はこのような事例では特に高い危険性がある。
一部生命を脅かす患者のリスクに加えて大きな経済的損失があり、ドイツだけでその額は数十億ユーロに達する。米国では疾病管理センター(CDC)による推計があり、それによると院内感染は45億ドルのコスト負担となる。英国の国民医療制度(NHS)は、毎年10億英ポンドという余分のコストがかかると推計している。いくつかの推計によると、MRSAに感染した患者は平均して病床に4日間長くとどまることになり、4000ユーロ、個別のケースでは2万ユーロの余分のコストがかかるという。MRSA感染後に衰弱する患者の合併症で最も多いのは手術創感染、肺炎、敗血(症)、尿道感染などである。
▽調査研究は世界的に全力で進む
ドイツ・ハンブルクのアスクレピオス・クリニックでのテストは初めは実験室で開始され、その結果危険性の高いMRSAを含む99・9%のバクテリアが銅表面で数分から数時間内に壊滅した。これとは対照的に、同じ病原菌はステンレススチール表面では3日生き残った。この結果、米環境保護庁(EPA)は最近になって今年3月、銅の抗菌効果を確認している。現行の調査研究は非常に長期間尊座していた科学的ギャップを完結しようとしている。ドイツ銅研究所(DKI)ビジネスマネジャーであるアントン・クラッサート博士は「人類は数千年にわたり銅の衛生的効果について前向きの経験を積んできた」と語る。抗菌適性に関する欧州銅能力センター所長によると、「DKIはヘルスケアシステムにおける現在の諸問題を抱えながらも、これら銅の特性を近代的病院に適用する最初の一歩を踏み出した」という。
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- [医療機器]銅が院内感染防止に有効、独クリニックなど研究結果 2008/08/25 月曜日