阪村氏のねじと人生
究極の塑性加工
サカムラは、ナットフォーマーの開発からパーツフォーマーを生み出し、世界のトップメーカーへと躍進した。出来れば、このナットフォーマーに雌ねじを成形し、熱処理、着色まで行って、完成品として市場に出してみたい。
常識では、高速にて往復運動を行うパンチの先端に正転、逆転を高速回転で行うタッパーを設けることは考えられないが、最近のサーボモーターの技術レベルでは不可能ではない。サカムラが開発するのではなく多くの電機メーカーが開発したサーボモーターから、タッピングに適するものを選べばよい。
そのため各国、各地の見本市には足を運び、遂に所定のねじピッチに追従して正転、逆転を行うサーボシステムを開発した。
サーボモーターは、慣性衝撃に弱いため、機械の外側に設け、スプラインシャフトとベベルギヤーにてタッパーを回した。「案ずるより生むが安し」でこれが成功し、次の特長があることを発見した。
①ナットフォーマーの圧造最終工程に設けたため、ピアス、サイジング後のナットの均一な下穴径に転造タップを施すため、高精度な雌ねじ成形ができる。
②ベンドタップを用いないため、直角度の正しい雌ねじ成形ができる。
③切削タップに比べ、切粉が出ないため経済的である。
④転造フローにより、ねじ山が成形されるため、有効径の面粗度も向上し、切削に比べて強い。
⑤切削タップに比べ2倍近い高速にて、雌ねじ成形ができる。
⑥切削タップのように、構成刃先が発生しないため突発的な不良の発生がない。
⑦次工程にて、雌ねじ成形の全数検査が行える。同時に、高速回転するダイヤモンドブラシにより、タップ加工にて発生するヒゲの除去とスプレー洗浄が施せる。
そのほかに、従来の方法と比べると、中間ストックの置場、タッパーの設置場所、供給等のスペースが不要となり、その経済的効果は思ったより大きいことであった。
次の課題はβ型チタン合金による時効硬化処理にて強度を上げ、レインボーカラーの着色を施すことである。美しい不思議な金属色をもった着色が、温度差により施せる。
ステンレスよりも強く、軽く、そして海水にも絶対サビない美しいナットが出来上がる。
日本列島はもとより、韓国、中国大陸を旅する時、目に付く高速道路、高層ビル、溢れる車、車、そのすべてのどこかにサカムラフォーマーで作られたナット、ねじパーツが用いられている。
すべてが地球に優しい環境へと変わってゆくため、美しく高強度で絶対ゆるまない「ねじ」がますます求められる。
サカムラは、次から次へとそれらを創造し、未来の社会へと貢献してゆきたいと願ってやまない。(完)
本紙2004年11月7日付(1949号)掲載。
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