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「生ハムの見分け方~加工肉の価値」

 イタリア人が、日本人も驚くほど鮮魚を食べないという話は既に書いたが、今回は彼らが好きな特殊な肉加工品について書く。特殊と言っても、もはや日本人に馴染みのあるかのように誤解されている「生ハム」についての話。
皆さんは本物の生ハムを食べているだろうか!? まず第一に本物の生ハムは決してお手軽ではない。だからといって臆する事もない。最近はコンビニに当たり前のように「生ハム」なるものが並んでいるが、値段を見るとお手軽だ。ただしそこで、原材料表記を見てみよう。実は本物の生ハムは塩と豚肉のみなのだ。

 ところが添加物だらけの生ハムモドキが日本のマーケットを占有している。東京の成城学園前に「サルメリア・ロッキュー」という店があるのだがご存知だろうか? 生ハムを盛り合わせてもらうだけのために行列が出来る店である。そこで人生の賭けだと思い、一皿¥3000くらいの生ハム類の盛り合わせを食べてみてほしい。これが実は本物なのだ。もちろんお望みであれば筆者の店「ヴィーノ・デッラ・パーチェ」でも同レベルの生ハム類を揃えている。いつでもご来店いただきたい。これは別に、商売とか宣伝とかいうことではない。そもそも美味しい生ハムの作り方というものは、健全な肉(主に豚)に塩を施して、その後乾燥と熟成させただけの単純な製法しかあり得ない。原材料となる肉が良質のものであれば、あれこれと調味する必要はない。食べ手はシンプルな製法だからこそ感じられる肉の純粋な旨味や、正当な熟成を経た肉の食感に酔いしれるのだ。ところが添加物の入った生ハムの場合、調味料で人工的に作られた味となり、元々の肉の味わいもへったくれもない。そしてその食感までもが変化してしまっている。

 第二に、生ハムは「おつまみ」ではない。本場イタリアで注文すると、まるで一大スペクタクルかのような盛り付けとボリュームで、その皿の上の世界観に圧倒される。何が言いたいのかというと、それは「伝統に則って職人が作った作品」なのだ。すなわち、最高の生ハムは良質の肉を乾燥調理した、言わば最高の肉料理の一つなのだ。普通の肉料理に比べ、乾燥するので目方が大幅に減るのと、その熟成期間中に何か異変でも起これば商品にはならない。どうやってそれを判断するのかというと、鹿の角を削って作った営利な突起を熟成中の生ハムに差して、その香りで判断するのだ。このように単純な手法だとリスクを負う事になるのだが添加物を加えないで作る事が全うな生ハム生産者のこだわりなのだ(続く)。





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